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現代病「心の病」の実情は…
  財団法人社会経済生産性本部のメンタル・ヘルス研究所は8月20日、全上場企業の人事労務担当者を対象にしたメンタルヘルスの取り組みに関する調査結果を発表した。前回調査(2002年)の結果と比較しても「心の病」は、増加傾向にあり、年齢別にみると30代が最も多いことが調査結果から明らかとなった。
●  最も多いのは「うつ病」
  この調査結果によると、約6割(58.2%)の企業で、最近3年間の「心の病」は増加傾向にあり、「心の病」によって1ヶ月以上休業している従業員が存在する企業は、66.8%であることがわかった。
  「心の病」のうち最も多い疾患は「うつ病(気分障害)」(85.8%)であり、次に「心身症」(4.5%)、「神経症(ノイローゼ)」(2.6%)と続く。「うつ病」は圧倒的な割合を占めているだけでなく、前回の調査結果(72.3%)を13.5ポイント上回っている現状を見ても、「うつ病」を企業の問題としてではなく社会全体の問題として捉える必要がありそうだ。
●  30代の危機
  「心の病」の最も多い年齢層は「30代」(49.3%)であり、次いで「40代」(22.0%)となっている。30代に関しては、自殺率の伸び率(17.0%)の高さ、精神障害等(自殺を含む)の労災認定件数の比率(36.0%)の高さなど近時の動向に加え、同本部で実施しているJMI健康調査による年齢別分析によっても、その危機が顕著になっている。
  これによると、過去との比較において、「将来への希望」(定年後も含めた今後の生活や将来に対する希望の程度)、「評価への満足感」(給与を含めた自分に対する評価への満足感の程度)、「仕事への負担感のなさ」(仕事の上での身体的、精神的、物理的な負担感の程度)の3つの尺度にいずれも顕著な落ち込みがみられる。
  具体的には、2003年度と1993年度の比較において、「現在の待遇にとても不満である」は、全体としては調査間の差はほとんどないものの、30代では若干(1.6%)不満に傾いている。「仕事がつらくてとても疲れる」「職場にいるときは、いつも気持ちにゆとりがない」においても同様に、30代に大きな差が現れている。
  いずれの指標も、管理者層と新入社員層のパイプ役や、近い将来の管理者候補としての期待、あるいは企業技術の伝承といった30代に求められる役割の重要性を考えると、企業にとっては無視できない数字である。
出典:財団法人社会経済生産性本部ホームページ
(社会保険労務士 庄司 英尚)
2004.09.21
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