>  今週のトピックス >  No.902
定率減税、廃止・縮小へ
●  廃止・縮小へ
  小渕恵三内閣時代の1999年、景気対策の一環として実施した「恒久的減税」のうちの「定率減税」が、廃止・縮小に向けて動き始めた。
  布石は昨年12月に与党で合意した「平成16年度税制改正大綱」に打たれている。
  「平成17年度及び平成18年度において、いわゆる恒久的減税(定率減税)の縮減、廃止とあわせ、(中略)個人所得課税の抜本的見直しを行う」とある。
  基礎年金の国庫負担割合引き上げを控え、公明党がこの文言を入れるよう強く働きかけたといわれる。
●  定率減税とは?
  定率減税とは「平成11年度税制改正」において家計の税負担を軽減する目的で導入された恒久的な減税のことである。所得税については税額の20%相当(25万円を限度)が、個人住民税では税額の15%相当(4万円を限度)が控除されるという制度。
  当制度における減税規模は、マクロベースでは年間約3.5兆円(うち所得税は約2.5兆円)にも及ぶ大規模なものである。
●  年収600万円で約5万円の負担増
  定率減税を廃止した場合、年収600万円、夫婦と子ども2人の家庭で年約5万円の増税となる。年収700万円の場合は、年8万2,000円、年収1,500万円なら年29万円の増税。
  家庭の負担増としては、すでに決定している「配偶者特別控除の廃止」や、「厚生年金保険料の引き上げ」など、家計の税・社会保険料負担増を伴う多くの制度改正がある。
  さらには、老年者控除の廃止に加え、公的年金等控除のうち65歳以上の人に対する上乗せが廃止される。
  また、マイカー族には自動車リサイクル法の施行に伴うリサイクル料の徴収が追い打ちをかける。来年は介護保険の見直しも予定されている。
  これらの影響が、家計の可処分所得の減少という形で表面化していくのはこれからである。
●  タイミングとしては?
  景気は回復傾向にあるものの、その回復は企業にとどまり、いまだ家計の所得環境が改善するまでには至っていないという見方や、今年度後半からは、家計の負担増を伴う制度改正の実施もすでに決定している。こうした制度改正が消費に及ぼす影響を見極めないうちに、定率減税を縮小・廃止し、家計に大きな負担を求めることは、消費者マインドを冷やし、消費を停滞させてしまうというリスクをより高めることになるのではないかなどといった意見もある。
  そして、恒久的減税といいながら、導入後5〜6年で制度を縮小・廃止していくというのは、いかがなものか。
  こういったことを考えると、アナウンス効果としても定率減税の縮小・廃止は公表すべきでないし、実際の制度変更についても、時期尚早ではないか、と思う。
  ただ、小渕内閣時代から続く大盤振る舞いのツケを払う時が近づいているのも事実。
  今年度は一般会計で82兆円もの歳出予算を組みながら、税収は42兆円。月給42万円の人が毎月82万円使う生活には無理がある。
  税制や社会保障制度トータルで家計に与えるインパクトを考えながらの舵取りを期待する。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2004.09.27
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