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ストックオプションに残る税務・会計上の課題
●  海外親会社のストックオプションが未決着
  ストックオプションは、企業の創業時点では十分な報酬を支払うことが難しいベンチャー企業などにおいては欠かせないインセンティブであるが、税務上および会計上の取り扱いには依然として課題が残っている。
  まず個人の所得税税務についてまとめると、税制適格なストックオプションと不適格なもので取り扱いが異なる。
  税制適格なストックオプションは、権利行使によって時価よりも安く株式を取得した際に、権利行使時点での株式の時価と権利行使価格の差額(行使益)を含み益として得ることができるが、行使時点では課税されない。株式を売却した時点で、初めて売却価格と権利行使価格の差額が譲渡所得として課税対象となる。
  一方、不適格なストックオプションは、行使益が給与所得として課税対象となり、売却時点で売却価格と権利行使時の時価との差額が譲渡所得として課税対象になるという2段階課税となる。
  なお、税制適格要件は複雑であるが、適格となりうる人はストックオプションを発行する法人やその子会社等の役員・従業員である(大口株主は除く)。ただし、年間の権利行使価格が1,200万円を超える場合は不適格となる。
  現在、税務上不透明であるのは海外企業が日本の子会社の従業員等に与えたストックオプションの行使益である。1998年までは行使益は一時所得とされていたが、その後、給与所得とされ、裁判での決着が求められている。判例は現在でも一時所得、給与所得と入り乱れ、決着をみていない。
●  会計上費用とするにも反対が強い
  これまではストックオプションの権利は、会社として費用や負債として認識されていないが、現在、企業会計基準委員会が費用化の方向で検討を進めている。
  現在の検討案は、
  1. 従業員等にストックオプションを付与した段階で、人件費として費用計上する。同時に負債またはそれに類するものとして貸借対照表に計上する。
  2. 権利行使された時点で、負債等に計上されている権利の価格を資本準備金に振り替える。
  3. ストックオプションが失効した場合は、負債等に計上されている額を特別利益として認識する。
  アメリカにおいても同じように費用として認識すべきとして、米国財務会計基準審議会(FASB)は会計基準を提案しているが、反対意見も強く実現していないのが現状である。
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2004.10.04
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