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移転価格税制
〜事前確認APAの状況〜
●  APAレポート2004
  国税庁より、本年6月末現在の我が国の移転価格税制における事前確認(APA)及びそのほかの相互協議の状況をまとめた「事前確認の状況(APAレポート2004)」が発表された。
  国税庁は、特に事前確認(APA)の中でも、二国間事前確認(二国間APA)を積極的に推進してきており、企業の利用件数も増加している。2003事務年度(2003年7月から2004年6月まで)では、発生件数が前年度の約1.7倍の80件と大幅に増加した。
●  APAとは?
  APAとは、Advance Pricing Arrangementの略で、事前確認という意味である。
  その事前確認とは、国外関連者との取引価格の設定方法について納税者と税務当局の間で事前に確認を得る制度であり、1987年に日本で導入されて以来、世界主要各国で導入されている。
  当該制度は、独立企業間価格の算定という難解な問題に対し、納税者に予測できる可能性を確保し、同時に税務当局の適正で円滑な執行を促すものとされている。
  APAを取得した場合のメリットとしては、確認対象年度において合意した移転価格算定方法に基づいている限り、移転価格調査や更正の対象とはならない。従って、移転価格リスクの大部分を事前に排除する有効な手段と考えられている。
  また、APA申出から合意に至るまでの処理期間は、申し出内容などに応じて異なるが、一件当たりの平均処理期間は2年弱である。また、正式な申し出に至るまでには半年〜1年程度の期間を要する。
●  二国間APA
  なお、移転価格リスクを完全に解消するには、取引の相手国でもAPAを取得する必要がある。APAには、一国の税務当局と合意をするユニラテラルAPAと二国または複数国の税務当局と合意をする二国間APAおよび多国間APAがある。前者は取引に係る一国の当局のみとの合意であり、他方に移転価格リスクが残るため、一般的には二国間APAおよび多国間APAが推奨され、国税庁も同様に推奨している。
  通常、二国間APAの申請と同時に相互協議を申し立て、二重課税リスクを事前に排除するために、条約に規定されている独立企業原則の解釈を租税条約締結国の権限ある当局間で協議することとなる。
●  増加要因
  APAの利用件数が増加する特徴を見ると
  • 業種別では、製造業だけでなく卸・小売業にまで広がってきている。
  • 対象となる取引形態では、棚卸取引だけでなく役務提供取引やロイヤルティ関係にも広がってきている。
  • 地域別内訳では、アメリカ中心からアジアにまで広がってきている。
  今まで移転価格税制というのは、基準が分かりにくく企業側にとしては不透明なリスク要因となっていた。
  それがこのAPA、特に二国間・多国間APAの取得によりリスクが軽減されるので、今後ますます利用が広がると考えられ、課税当局もそれを後押ししている。
  さらなる広がりのためには、手続きの簡便さが今後求められるだろう。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2004.10.04
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