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ゴルフ会員権、損益通算廃止か
●  財務省の見解は、ぜいたく品
  財務省は、個人が保有するゴルフ場の会員権を「投資対象のぜいたく品」と見なし、売却時に生じる譲渡損をほかの所得と相殺(損益通算)できないように所得税法などを改正する方針を固めた。個人所得課税の抜本改革に合わせて、2005年度から実施する方向で検討に入った。
  現在、個人が保有する競走馬や書画、古美術品、貴金属、別荘などは「通常の生活に必要でない資産」=「ぜいたく品」と見なされている。そのため、売却時の損失をほかの所得と相殺できないようになっている。しかし、ゴルフ場などの会員権は、個人所得課税の損益通算に「ぜいたく品」の規定外のため、現行税法上はぜいたく品と見なされていない。
●  現在税務上の取り扱い
  このため、ゴルフ会員権の売却価額から取得費や手数料などを差し引いて損失(赤字)が出た場合、給与などほかの所得(黒字)と相殺でき、翌年に支払う個人住民税も減らすことができる。
  ちなみに、利益が出た場合の取り扱いは、ゴルフ会員権の取得形態にかかわらずいずれも譲渡所得として事業所得、給与所得などと合算し総合所得として課税の対象になる。個人の場合の具体的な税額計算は、所有期間が5年以下と5年超で異なる。所有期間5年以下の場合は、譲渡収入金額から取得費と譲渡費用さらには特別控除額50万円を控除して残りが課税対象となる。所有期間5年超の場合では、譲渡収入金額から取得費と譲渡費用さらには特別控除額50万円を控除してそれの半分が課税対象となる。つまりゴルフ会員権を譲渡して譲渡益が発生する場合には、5年超所有してから譲渡するほうが、税務上は有利となる。法人の場合には、個人の場合と異なり所有期間による区分はせず、そのまま譲渡収入金額から取得費と譲渡費用の差額について、ゴルフ会員権の売却差損益として法人の所得を計算することになる。
●  財務省の見解
  所得課税の強化を検討している財務省は、「会員権の実態は古美術品などと同じぜいたく品と見なせる」として、相殺を認めない方向で検討することになった。もし実施が決まると、個人が値下がりしたゴルフ会員権などを売却損出した場合でも所得税額や住民税額は減らせなくなる。
  法人所有のゴルフ会員権は、売却損と利益を相殺して法人税を払うことができるが、この仕組みは変えない。
●  政府税調の考え
  ゴルフ会員権をめぐっては、政府税制調査会(首相の諮問機関)が2000年7月の中期答申「わが国税制の現状と課題」で、損益通算のあり方について「実態を踏まえつつ検討を加えることが必要」と指摘した。
  そして2004年6月にも、個人の金融商品取引に関する所得税制の抜本的な見直しとなる「金融所得の一体課税」の概要を発表したが、そこでゴルフ会員権の売買損益については金融一体課税の対象外とし、現行の総合課税を維持する方針が示された。
  しかし、ゴルフ会員権の売却損相殺廃止についての結論は出ていないため、所得税法改正案の正式な発表まで待つことになりそうだ。
●  見解
  平成16年度税制改正で不動産の損益通算が、事実上廃止された。そして、今回のゴルフ会員権問題を考えると、間違いなく損益通算が廃止されるのではないかと思う。さらに時期としては、平成17年1月からとなるであろう。
  もし、みなさんの中に損切りしようと考えているゴルフ会員権があれば、今年中に売却の検討・実施することをおすすめする。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2004.10.12
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