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「第31回国際福祉機器展」が開催される
〜介護予防&悪化防止が大きなテーマに〜
  福祉機器に関する国内最大級のイベント「第31回 国際福祉機器展」が、10月13〜15日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。出展企業・団体は645、展示された福祉機器は2万5,000点にも及び、介護保険が導入された2000年当時を上回る規模となった。
●  法とリンクした展示内容
  今回、特に目についたのは、「介護予防、および要介護状態の悪化防止」をテーマとした展示の多さである。高齢者の筋力低下を防ぐパワーリハビリ機器や口腔ケアのキット、手先を使いながらゲーム感覚でリハビリができる器具などについて、例年以上のスペースが割かれ、機器の点数も豊富。介護現場の人が出展者から熱心に話を聞く光景も目立った。
  周知の通り、来年に改正が予定されている介護保険制度では、「介護予防・要介護悪化防止」に焦点が当てられている。人手を使ったサービスに加え、機器類についても新たに給付やレンタルの対象になるものが増える可能性は高い。マーケットとして有望視されるのも当然だろう。
●  福祉機器の進歩は、その概念の定着化!
  表立って「介護予防・要介護悪化防止」をPRしていなくても、その思想が垣間見える機器が目立ったのも興味深い。
  要介護の悪化を防ぐうえで最も重要なのは、寝たきりから座位をとる「離床」、座位から立ち上がる「立位」、立位から歩行する「自立歩行」、および家の中から外へ出ていく「外出」と言われている。つまり、一つの動作(状態)から別の動作(状態)へという「流れ」をサポートする考え方がポイントとなるわけだ。
  例えば「離床」に目を向けてみると、寝たままの状態でソファに変形できるというベッドがあった。これなら、介助者の手を使わずに「寝たきりから座位」に向かう動作がスムーズにできる。「立位」に関しては、「座位から立ち上がり」をサポートする「立ち上がり補助機能の付いたイス」があげられる。昨年、新たに介護保険のレンタル対象となった機器だが、そのせいもあって昨年の同機器展から比較して展示点数も増加している。さらに「自立歩行」に関しては、「両下肢に麻痺がある人でも自立歩行できる歩行器」や、仮に転倒した場合でも「骨折リスクを抑える保護機能付きパンツ」など、歩行の際の困難や不安を解消するための機器が目立った。
  さらに印象に残ったのが「外出」の部分である。介護保険の住宅改修費によって一般家庭用のエレベーターやスロープの設置が普及してきたが、賃貸住宅や古い木造アパートの階上などでは、相変わらず「外出をスムーズに行うための改修が難しい」というケースも多い。そうした中、車イスに取り付けることで階段走行ができる機器や、ちょっとした段差なら楽に乗り越えられる車いすの補助輪といった、「現場の悩みに丁寧に応えている」という印象を抱かせる機器が目立つ。設置工事を施さなくても取り付け可能で、しかも強度の高いスロープなども、ここ1年ですいぶん種類が豊富になってきた。
  福祉機器の進歩は、そのまま「介護に対する考え方」の進化を表す。今回の機器展は、「介護=自立促進」という考え方がようやく根づいてきたことを改めて印象づけてくれる。
(医療・福祉ジャーナリスト  田中 元)
2004.10.25
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