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環境税1世帯当たり、年間4,950円
  環境省は21日、ガソリンなど化石燃料の消費に応じて課税する環境税について、炭素1トン当たり3,600円を課税する案を提示した。
  この案は、石油の輸入・精製など「上流段階での課税」と、家庭の電気・ガス料金とともに徴収するなど「下流段階での課税」を合わせたものである。
  税率を炭素1トン当たり3,600円とすると、税収は年間約1兆円となる。これによる1世帯当たりの税負担は、年間4,950円である。
  税導入によるエネルギー消費の削減効果は、1年後で0.4%、7〜8年後には1.3%の削減が見込まれるとしている。
  さらに、税収をすべて温暖化対策に使った場合には、2010年の二酸化炭素排出量は、1990年に比べ0.4%増となり、導入しない場合よりも10%近く削減できると試算している。
  この案を2005年度から導入した場合、2005〜2010年平均で、GDPが年率0.03%減少すると予想している。
●  環境税導入には反対意見が多い
  「環境税導入には、強く反対する。現在の経済状況では、価格転嫁できず、企業負担になる可能性が高い。また、海外競争力が落ちることも懸念する」と産業界、日本経済団体連合会のコメントしている。
  実際、1990年度と2000年度のCO2排出量を比較すると、家庭などの民生部門が21.3%増なのに対して、運輸部門を除く工場などの産業部門は、0.9%増にとどめている。
  次には、財務省が反対している。環境省としては、環境税収の使い道として、環境対策だけに振り向けたいと考えている。つまり、特定財源化したいということである。
  しかし、それに対して財務省は「無駄遣いにつながる」という理由で、特定財源化には反対している。
●  「直接規制」と「経済的手段」
  それでも環境省が「環境税」の導入をすすめるのは、一つは来年発効される予定の京都議定書の存在。そして、もう一つの「環境税」をすすめる理由は、環境対策における方法の消去法に基づくものである。
  環境を守るためには、「直接規制」と「経済的手段」がある。
  「直接規制」とは、汚染の源を一つ一つ規制していく方法である。例えば、汚染しないように基準をつくったり、許認可などで法的抑制をしたりである。これは、実行すると即効性が期待できるが、行政側のコストは大きい。
  「経済的手段」には、補助金、排出権取引、環境税などがある。
  この場合の補助金とは、汚染者に対して金銭的な援助をし、汚染を防ぐ対策を求めるものである。排出権取引とは、汚染物質の総排出量を決めて、排出権を排出者に割り当て、それを市場で取引させるもの。環境税は、汚染に対して課税され、汚染者から徴収するものである。
●  PPPが大事
  PPPとは、polluter-pays principleの略である。訳すと、「汚染者負担の原則」となる。つまり、環境汚染をした人が、その汚染により発生するコストを負担すべきであるという考えだ。
  PPPの立場にたって、先ほどの、「経済的手段」を考えてみる。
  まずは、補助金であるが、これは汚染者を援助することになるのでよくない。
  次に、排出権取引であるが、排出権を今までの排出量をもとに割り当てることになると、今まで、より多く汚染してきた人が得する結果になってしまう。
  最後に、残るのが、税金である「環境税」となる。環境税は、汚染物質の排出量に応じて税金をかける(ガソリン代や電気代の場合は、消費者が購入する段階で課税する)。
  これであれば、消費者(企業の場合もある)の損得勘定で、削減効果が期待できる。また、その税収を使って、さらなる削減対策にも使える。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2004.10.25
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