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非嫡出子の相続格差、合憲と判断
●  非嫡出子の相続格差、合憲と判断
  婚姻届を出していない男女間の子「非嫡出子」の相続分を、法律上の夫婦の子「嫡出子」の2分の1とする民法の規定が憲法に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(島田仁郎裁判長)は10月14日、1995年の最高裁大法廷判例を踏襲し合憲と判断した。
  ただ、5人の裁判官のうち2人が「違憲」とする反対意見を述べ、ほか1人が「極めて違憲の疑いが濃い」とする補足意見を述べた。
  同様の3件の訴訟で最高裁は昨年3月と6月、二つの小法廷でそれぞれ2人が反対意見を述べた上で合憲とする判決を言い渡している。
  今回の訴訟は死亡した男性の嫡出子3人が、相続財産を巡り非嫡出子の男性を相手に不当利得の返還を求めていたが、第一小法廷は非嫡出子側の上告を棄却、返還を命じた1、2審判決が確定した。
●  合憲判断に反対意見も
  「家族関係や相続を巡る社会状況の変化は著しく、嫡出子と非嫡出子の区別をなくす方向に進んでいる」とした上で、「国際化が進み、価値観が多様化して両親と子どもの関係も変容を受けている状況下では、親が結婚しているか否かという、子どもが自分で決められない事情で相続分に差異を設けることに格別の合理性は見いだせない」と指摘した。
●  現状の法律に基づく判決と実態に合わない法律との難しい問題
  「非嫡出子は嫡出子の半分の相続分しかない。それを同じ子どもなのだから、平等に同じ割合にするべきだ」と争っていたのが今回の裁判である。
  通常、遺産分割は話し合いで決める。しかし遺言があると、遺言にそって遺産分割がなされるが、この遺留分を侵害する形で遺言がなされたのが今回のケースである。このような遺言を書いた被相続人には、嫡出子に相続させたくないなんらかの理由があったと推測される。
  法律が実態に合っていないというのは、よくあるケース。しかし、現状の法律に基づいて判決が下りるのも、法律に基づく国である以上、仕方のないことである。そういう意味で今回のケースは判断が非常に難しい問題であるといえる。
参考:
  「非嫡出子」とは、結婚していない男女の間に生まれ、認知された子どものことをいう。認知とは自分がその子の親だと認めることである。一方「嫡出子」は結婚している男女の間に生まれた子どもをいう。
  「相続分」とは、通常、配偶者がいる場合、子どもの法定相続分は全体の2分の1を子どもの人数で割った分となる。しかし、非嫡出子の場合はこの限りではない。非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1となる。つまり、非嫡出子と嫡出子の割合は1対2なのである。
  「遺留分」は、遺言でも留めておく分というもの。民法では、法定相続人が必ず相続することができるとされている最低限の相続分が保証されている。この保証された分を「遺留分」という。この遺留分に関しては、遺言で侵害されても取り返すことができる。これを遺留分の「減殺請求」という。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2004.11.01
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