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社会保険料の増加により、企業行動にも変化
  経済産業省は10月18日に「企業活動と公的負担に関する緊急調査」の結果を発表した。この調査結果によると、社会保障制度に対する企業側の不満として「社会保険料が高い」、「保険料がたびたび上がり、先止まり感がない」などの声が多かった。現状の社会保険料負担が少しでも増えると、企業行動に変更を生じざるを得ないという回答もあり、その対策として雇用形態の変更や海外移転などを考えていることが調査結果から読み取ることができる。
●  企業にとって社会保険料の負担は重い
  年金制度改革法が国会で成立し、保険料負担と年金給付のしくみを大幅に見直すことになったわけだが、2004年10月からは厚生年金の保険料率が0.354%引き上げられた。今後この厚生年金保険料率は、毎年引き上げられていくことを考えると、各企業は何らかの対応策を考えていかなければならない。
  例えば、年収500万円(月額30万円、賞与年間140万円)の会社員の場合、厚生年金保険料は、1人あたり年間で8,850円(企業負担分)の増加となる。仮に年収500万円の従業員が100人在籍している会社であれば、保険料の負担は年間で88万5,000円増えることになり、今後のことを真剣に考えなければならない状況もよく理解できる。
●  社会保険料の増加に対して、雇用形態の変更で対応
  「現状の社会保険料がどの程度まで上昇すると、企業行動に変更を生じざるを得ないか」という質問に対して、大手企業の約15%、中堅・中小企業の22%が「現状より少しでも上がれば企業行動に変更を生じざるを得ない」と回答している。また社会保険料が現状から20%程度上昇するとした場合、大企業、中堅・中小企業を問わず9割以上の企業が企業行動に変更を生じざるを得ないと回答している。
  「実際に負担が上昇した場合にどのような対応を取るか」という質問に対しては、「非正規雇用・請負形態への切替」が大企業、中堅・中小企業のどちらでも最も多い回答となった。「賃金の調整を行う」、「従業員の調整を行う」と答えた割合も多かったが、大企業では「海外活動の比重を高める」という回答も目立った。
  調査結果を分析していくと、今後増加すると予測される社会保障負担については、間接税(消費税)を充てるなど国民全体で支えていく仕組みを検討しなければならないという声が多い。政府は、十分な議論を経てから国民が納得できる社会保障制度をつくり、それを持続させていくためにも、企業側の意見もきちんと取り込んでいく必要があるのではないだろうか。
参考:経済産業省「企業活動と公的負担に関する緊急調査について」
(社会保険労務士 庄司 英尚)
2004.11.01
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