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米国大統領選が与える今後の日本経済への影響
  4年ぶりの米国大統領選が11月2日に行われ、ブッシュ大統領が再選された。大統領候補は、ご存じのように共和党のブッシュ現大統領と民主党のケリー上院議員であった。
  最近では、個人投資家向けに、外貨預金、外貨建て年金、そして海外株式ファンドを組み込んだ変額年金も多数発売されている。そして米国の大統領選は、今まで以上に日本の個人投資家に与える影響が大きいといえる。そこで今回は、大統領選の結果が個人投資家にどのような影響を与えるのか。為替や株式相場に対して、短期および長期的シナリオを考えてみる。
●  短期的な相場動向のシナリオ
  最近の新聞報道などによると、米国大統領選の結果によって、短期的に大きな影響を受けるのは、米ドルと日本円の為替相場であるといわれていた。その理由の一つは、円高進行の場合の両候補の考え方が、日本政府の為替介入に対する考えと大きく異なっていたからである。
  ちなみに2003年度の日本政府の為替介入額は30兆円を突破、回数も80回を超えるなど、史上最高額の為替介入が行われた年であった。
  ブッシュ大統領が再選されたことで、一定の円安容認という為替政策に変更はない。そこで投資家のドル買いの安心感が広がり、ドル高へと為替相場が反転する可能性があるといえる。
  為替介入に批判的なケリー候補が大統領になっていた場合、日本政府は、為替介入がしづらくなるため、一時的に急激な円高進行の可能性があったといえる。
●  長期的な相場動向のシナリオ
  短期的にはドル高のブッシュ大統領、ドル安のケリー候補という予想があったが、長期的な為替相場は、経済状態から判断して両国間(米ドルの場合は、日本と米国)のどちらの通貨が、魅力的な通貨かということに収束していることを忘れてはならない。つまり、為替介入は、あくまで短期的な影響に過ぎず、長期的に影響を与えることはほとんどない。長期的な為替相場・株式相場に影響を与えるのは、当然、経済政策といえよう。
  ブッシュ大統領は、富裕層への減税策などにより消費を刺激することで、景気対策を行ってきた。また、現在の米国経済は、回復を示す経済指標と失速を示す経済指標が入り乱れており、微妙な状態といえる。このことから、ブッシュ大統領が再選されたことによって、米国経済は急激な経済失速はないものの、大統領選中に行った減税効果のはく落や大統領選により刺激された消費の反動により、来年度以降は若干の経済の失速が予想される。しかし、現在の日本経済は、米国の緩やかな経済失速を吸収できる程度の経済回復を見せているため、日本経済への深刻な悪影響はないと思われる。
  なお、ケリー候補の財政再建に重きを置いた政策により、米国経済はブッシュ大統領以上に失速する可能性があった。また、ケリー候補は国内保護主義的な政策であったため、スーパー301条の復活・発動という事態に陥れば、日本経済への深刻な悪影響が懸念された(ケリー候補の目指す財政再建が成功すれば、当然米国経済が上向き、その結果、ドル高・米国株高となる可能性は十分考えられることも忘れてはならない)。
  以上の短期・長期の二つのシナリオは、ブッシュ大統領が再選となったことで、現在のところ、選挙前とあまり状況に変化はないと考えられる。しかし、政権の交代は、為替・株に大きな変化をもたらすものであり、個人の資産運用にも大きな影響を与えるようになりつつある。従って、もし海外資産で運用する場合は、なるべく米国だけに集中させて運用せず、一部をユーロなどに分散し、政権交代などによる影響を軽減する手段を講じる必要があるといえよう。
2004.11.08
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