>  今週のトピックス >  No.930
東証が相次ぐ虚偽報告で要請文
〜情報の適切開示求む〜
●  全上場企業に社長名で
  東京証券取引所(以下、東証)は10月末、東証に上場する国内外の2,283社に対し、会社情報を投資家に適切に開示することを求める異例の文書を発送した。10月中旬以降、有価証券報告書への虚偽記載など、上場企業の不正行為が立て続けに発覚。市場全体の信頼が損なわれることを防ぐため、前代未聞の要請に踏み切った。
  要請文は鶴島琢夫東証社長名で送付された。鶴島社長は「先般来、会社情報の開示が適切に行われず、多くの投資者の信頼を損なうような事例が相次いで判明し、上場会社ならびに証券市場に対する社会的な信頼の失墜を招きかねない事態が生じている」と指摘。「一部の上場会社の企業倫理の欠如に起因するもの」と断りながらも、「情報開示に関係する社内管理体制などを検証し、万全の対応をお願いしたい」としている。
●  西武鉄道問題が引き金
  10月中旬に、まず西武鉄道が長年に渡って有価証券報告書に大株主の持ち株比率を過少に記載していたことが判明した。西武鉄道の上位10社の大株主の持ち株比率は、2004年3月期末で88%以上あったにもかかわらず、有価証券報告書には64%と少なく記載した。東証一部では、大株主10社と取締役などの合計保有比率が80%を超えた場合、一定期間内に同水準以下にしなければ上場廃止になる。西武のケースでは、親会社コクドが株の大半を実質保有しており、高値安定で株価形成をした疑いが持たれている。その場合、コクドは西武鉄道株の資産を担保に、銀行の信用を得るという利益を享受できたことが問題だ。西武グループでは伊豆箱根鉄道でも同様の過小記載があった。
  10月下旬には東証マザーズのアソシエント・テクノロジーが決算を粉飾していたことが発覚。さらにカネボウの現経営陣が、旧経営陣による粉飾決算を指摘し、法的手段に訴えるとしている。東証が異例の要請文を出した後も、日本テレビ放送網が有価証券報告書の記載を訂正するなど、上場企業の混乱は止まらない。
●  審査によっては上場廃止へ
  東証はいずれの銘柄も上場廃止を検討する監理ポストに割り当て、審査を進めている。監理ポストへの割り当ては、上場廃止の可能性があることを投資家に注意喚起するのが目的で、証券取引所の上場廃止基準に該当するか、もしくは該当する恐れがある銘柄が対象となる。審査の結果、上場廃止基準に該当するとの結論が出れば整理ポストに移され、原則として移行後1カ月で上場廃止となる。なお上場廃止基準に該当しないことが明らかになれば通常の取引に戻る。
2004.11.15
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