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「第三のビール」に課税強化
〜来年度税制改正答申の骨格固まる〜
●  「第三のビール」に増税
  首相の諮問機関である政府税制調査会(政府税調)は、平成17年度税制改正答申の骨格を固めた。ビールや発泡酒より適用税率が低い、いわゆる「第三のビール」が登場するなど、現在の酒税が市場の実態に合わなくなっていると判断。酒税の見直しを提言する。
  酒税は原料やアルコール度数などによって税率が異なり、それが価格の違いにも表れている。政府税調は、事実上ビールとして同じ飲まれ方をしているものでも、原料などを変えて低税率に区分されている商品を問題視しており、課税を強化する方向で検討する。
  政府税調の答申には具体的な商品名を明記しないが、サッポロビールなどが販売するビール風アルコール飲料『ドラフトワン』などを念頭に、酒類間の税負担の格差縮小を検討する模様である。
●  発泡酒の歴史は、税金との戦いの歴史
  ビール・発泡酒の歴史は、まさに税金との戦いの歴史である。1994年に本格登場した「発泡酒」は1996年に一度増税されている。2001年度の税制改正でも「発泡酒へのさらなる増税」が議論されたが、この時はデフレ経済も考慮されて見送られた。しかし、2003年度の税制改正で再度増税され、2003年5月から350ミリリットル缶で約10円の値上げとなった。
  そして今回の政府税調の答申で「第三のビール」に対しても課税を強化する様子だ。
【図表 先進国における
ビール(500ml)の税金比較】
日本
111円
イギリス
49円
アメリカ
9円
フランス
7円
ドイツ
5円
●  突出して高い日本のビール税
  ビール税制を考える場合、まずは世界の中での日本の位置付けを見るべきである。先進国のビールに対する税金の考え方は、アルコール度数に比例している。つまり、ビールのようにアルコール度数が低い飲み物は、酒税も低く設定されているのである(図表)。
●  日本の酒税はビール税で成り立つ
  実は日本の酒税というのは、ビール税で成り立っている。さまざまな種類のお酒「500ミリリットル・アルコール分1度当たりの税金」を比較すると、ビールが22.2円なのに対し、清酒は4.7円、焼酎は4.9円、ウイスキー類は5.1円、スピリッツ類が4.9円である。
●  企業努力にも限界か
  日本のビール・発泡酒に対する税率は世界的に見ても突出して高く、さらには日本の酒税の中でもビールが一番高い。
  これはビール業界がほぼ5社(アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリー、オリオンビール)の独占状態になっているためか。つまり、この5社を納得させれば税率を上げることができるということになる。
  また政治的な面からビール税制を見ると、日本酒などの業界に比べて、選挙の際の票に結びにくいのではないか。清酒や焼酎などは全国的に大きなメーカーがあるが、各地域に多数の中小メーカーも存在し、中にはその土地の名士的な人も多い。つまり、清酒や焼酎業界は、選挙の際に大きな影響力を持っていると考えられる。
  ちなみに、わたしは発泡酒派だ。その理由は苦味や香りが少なく飲みやすいからである。こういった個人の趣味に税制が歪みを与えるのはどうかと思う。欧米のように、アルコール度数など分かりやすい基準で課税するべきではないだろうか。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2004.11.22
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