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所得税実地調査1件当たりの申告漏れは過去最高
●  実地調査における1件当たりの申告漏れは723万円
  国税庁がこのほどまとめた今年6月までの1年間(2003事務年度)における所得税の調査状況によると、実地調査件数が減少する中で、1件当たりの申告漏れ所得は前年度より5.7%多い723万円となり、ここ10年間では最高となった。近年は、納税者数に対する実地調査件数の割合である実調率の低下が問題視されているが、実地調査はそれよりも重点的・集中的に行われているようだ。
  2003年度の所得税調査は、前年度より3.9%多い79万9,000件に対して実施され、そのうち7割強の57万7,000件から9,093億円(前年度比6.2%増)の申告漏れ所得を見つけた。追徴税額は1,307億円(同3.0%増)だった。平均で1件当たり114万円の申告漏れに対し16万円を追徴した。
  なお今年度の調査件数が増えたのは、実地調査までには至らない電話や来署依頼で済ます「簡易な接触」が、前年度より4.9%増えた72万8,000件となったためである。
●  実地調査での追徴税額の2割強に過ぎない「簡易な接触」
  実地調査は、前年度より4.6%少ない7万件に対して行われ、うち87.0%にあたる6万1,000件(前年度比4.7%減)から総額5,068億円(同0.7%増)の申告漏れ所得を見つけ、加算税159億円など1,071億円(同1.1%増)の税額を追徴した。「簡易な接触」では、51万6,000件から4,024億円の申告漏れ所得を見つけたが、その追徴税額は237億円と実地調査の2割強に過ぎない。
  実地調査はもともと申告所得が過少だったり、申告義務があるにもかかわらず申告していないなど、何らかの非違がある可能性が高い事案を選定しているのだから当然だが、改めて実地調査の威力が裏付けられた結果となった。
  ともあれ、近年の所得税調査は、国税職員の定員減を「簡易な接触」を増やすことで補い、対象を的確に絞った実地調査に人員を投入することで成果を上げている。
●  業種別ワースト1位は3年連続で「貸金業」
  業種別1件当たりの申告漏れ所得金額のワースト1位は「貸金業」が2,787万円で、ワースト3には貸金業に続いて「風俗業(2,297万円)」、「病院(2,138万円)」が入っている。この順位は3年連続変わらない。「貸金業」、「風俗業」については、直近の年分にかかる申告漏れ割合もそれぞれ89.3%、87.3%と高い。「病院」の申告漏れ割合は全体の5.5%に過ぎないが、それでも3位にランクされるということは所得が相当高いということである。ちなみに、4位は「バー(1,548万円)」。BSEや鳥インフルエンザ騒動の反動で好況とも思われる「養豚業」が1,362万円ろ、前年のランク外からの5位に入った。
参考:国税庁「平成15事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2004.11.22
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