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サービス残業の改善に向けた取り組みが必要
●  積極化しているサービス残業是正指導
  厚生労働省は、2003年4月から2004年3月までの1年間に、労働基準監督署を通じて賃金不払い残業(所定労働時間外の労働の一部または全部に対する賃金が支払われないこと。以下、サービス残業と言う)の是正指導において、2003年度で1企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた事案をまとめた。
  是正指導されたのは1,184企業で、対象となる労働者は約19万5,000人。支払われた割増賃金の合計は238億7,000万円に上る。これは1企業当たり約2,000万円、労働者一人当たり12万円の計算となる。ちなみに2001年度の1企業当たりの割増賃金は1,328万円、2002年度は1,796万円だった。是正指導案件は、2001年度が613件、2002年度が403件だった。これらの結果を見ると、いずれも2003年度は急増していることがわかる。
  この背景には厚生労働省がサービス残業に対して厳しい対応に切り替えたことがある。
  まず2001年に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」が策定され、各都道府県労働局に通知された。その主な内容は、
  1. 使用者は単に労働時間だけでなく、始業時刻・終業時刻を記録すること。
  2. 始業・終業時刻の記録は、労働者の自己申告ではなく、使用者自らが記録するか、タイムカードなどで客観的に記録すること。
  3. やむを得ず自己申告となる場合は、時間外労働時間の上限を設定しないこと。
  4. 労働時間の記録書類は3年間保存すること。
といったものである。
  この基準を徹底するため、毎年事業所の指導を行っているが、違反事業所は2001年で29.0%、2002年で32.9%、2003年11月で37.8%、2004年6月で36.4%と、毎年増加している。
●  企業トップが企業風土を変える
  これを受けて、厚生労働省は2003年に「賃金不払残業総合対策要綱」と「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」を策定した。 要綱の主な内容は、
  1. サービス残業解消のキャンペーン月を設定し、労使の取り組みを促す。
  2. 重大悪質なサービス残業については積極的な司法処分を行う。
  3. サービス残業重点監督月間を設ける、など取り締りを強化することで、サービス残業の解消を目指す。
となっている。
  指針では、
  1. 36協定の一方の当事者でもある労働組合に対してもチェック機能の役割を求める。
  2. サービス残業は仕方ないという企業風土を企業トップ自ら否定する。
  3. 人事評価の項目にサービス残業の管理状況を盛り込む。
といった具体的な方策も盛り込まれている。
  厚生労働省は残業自体を否定しているのではなく、残業時間の把握と賃金の適正な支払いを求めるという現実的な指導である。是正指導が入ると今後の企業活動にも支障が出ることも懸念されるため、サービス残業の実態がある企業については、早急な対策の立案が求められる。
参考:厚生労働省ホームページ「監督指導による賃金不払残業の是正結果」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2004.11.29
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