>  今週のトピックス >  No.937
都内100企業が不払い残業代約29億円をさかのぼって支払う
  東京労働局は、平成16年4月から9月までの半年間に、管下18労働基準監督署(支署を含む)において、時間外労働(残業)などの割増賃金が適正に支払われていないのは労働基準法第37条違反として、その是正を勧告・指導していたが、1企業当たり100万円以上支払われたものの状況を取りまとめ、17日にその結果を発表した。
  割増賃金を100万円以上支払った企業は100社、支払額の総額は28億6,199万円となった。支払額としては、結果を取りまとめ始めた平成13年度下半期以降、過去最高となった。
●  労働者数では商業、支払金額では金融・広告業が最多
  発表された結果を業種別に見ると、労働者数では商業が5,991人で最も多く、次いで金融・広告業の4,731人となっている。支払金額では、金融・広告業が6億1,583万円、教育研究業の5億2,063万円の順となっている。
  規模別に見ると、企業数では100人未満の規模が最も多く、対象となった労働者数、支払金額では1,000〜4,999人規模が最も多くなっている。
  労働基準監督署の是正指導は、大企業だけが対象で中小企業などは関係ないと思っている経営者も多いが、この結果が示している通り、企業規模が大きなところを優先して調査するわけではない。中小企業が労働基準監督署の調査対象になり、是正指導を受けて未払い残業代の支払いを命じられれば、金額によっては資金繰りが悪化し、経営にも影響が出ることもあるだろう。また労働基準監督署への報告や社内の事務処理などに多大な時間を費やすことにもなる。
●  1企業での最高支払額は4億4,145万円
  1企業での最高支払額は、4億4,145万円(教育研究業)で、次いで4億3,900万円(金融・広告業)だった。違反の態様を見ると、自己申告制の時間外労働と実態が乖離(かいり)していたり、外勤労働者の時間管理ができていないなどが挙げられている。また労働時間管理をきちんとしていても、36協定で定める限度を超える時間を足切りする例などもあった。
  今回支払対象となった100社のうち、調査のきっかけは投書などの情報によるものが57社、労働者の申告によるものが5社、その他(特定の情報に基づかずに実施した調査指導)が38社となっている。
  最近は、インターネット上に労働トラブルの情報などがあふれており、泣き寝入りしないで労働者の権利を主張する人も増加傾向にある。今後、企業もますますきちんとした労務管理が求められるだろう。
●  今回是正指導されたのは氷山の一角
  賃金不払い残業の解消については、これまでも労働基準行政の重点課題として取り組んできた。それにもかかわらず、今回までの取りまとめ結果から、依然として賃金不払い残業が多いことが明らかとなった。水面下では、不払い残業の企業が多数存在することは確かであり、1日も早く解決してほしいところである。
  企業が残業時間の自己申告制度を導入していても、実態が伴っていなければ問題だ。使用者には労働時間を把握する義務があることを考えると、全責任は企業側にあるといっても間違いない。成果主義の導入、リストラによる人員の削減などは、労働時間が増加している原因の一つであるが、まずは視点を変えて、経営陣もどのようにしたら残業時間が削減できるか、労働者と一緒になって真剣に考えてみるのもよいのではないだろうか。
参考:東京労働局「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成16年度上半期)」
(庄司英尚、社会保険労務士)
2004.11.29
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