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銀行の証券仲介業解禁は、個人の資産運用にどう影響するか
●  株式投資環境悪化が要因で現金・預貯金比率が上昇
  日本の個人金融資産保有額は、約1,426兆円(2004年6月末)。そのうち現金や預貯金の占める比率は約55%である。アメリカ、ドイツ、フランスなどの欧米諸国では、ここ10年間で、個人金融資産に占める同比率は次第に減少し、投資信託や変額年金など自己責任による資産運用商品の比率が上昇した。ところが日本の場合、自己責任による資産運用商品である投資信託などの比率は減少、現・預貯金比率は上昇しており、欧米諸国とは大きく異なる結果となっている。
  1998年以降の日本版金融ビックバンにより、「銀行」「保険」「証券」という業界の垣根が急速に低くなっているが、現在の現・預貯金の比率を見る限り、「日本版金融ビックバンは掛け声倒れに終わったのではないか」という印象を持つ人も多いかもしれない。しかし、現・預貯金が上昇した理由の一つは、ビックバン以降の金融不安や日経平均8,000円割れなどに代表される株式投資環境悪化が大きな要因と考えられる。
●  個人資産運用スタイルに変化の兆し
  業界の垣根が低くなることによる個人の資産運用スタイルは、着実な変化の兆しが見えている。
  その具体的な変化の兆しとしては、
  1. 銀行窓販による公募株式投資信託の純資産残高が、2004年10月末現在で45.8%に達したこと。また銀行窓販の純資産残高のうち、89%が公募株式投資信託で占められていること。
  2. 個人の外貨預金残高が、2004年9月末現在で国内銀行、外国銀行在日支店合計で5.5兆円に達していること。加えて外貨建てMMFの残高も、1.2兆円を突破していること。
  3. 外貨建ての定額年金の販売額は急拡大していること。
  4. 2003年度の個人の株式売買シェアは約30%に達し、10年来の高水準に達していること。またインターネット証券の口座数も急増していること。
などが挙げられる。
●  預貯金から投資型金融商品にシフトを期待
  このように個人の資産運用スタイルに変化が見えつつある状況下で、12月1日、日本版金融ビックバンの集大成といえる銀行への証券仲介業が解禁された。これによって、個人投資家に人気を集めている「海外債券」や「ETF」、「J−REIT」などを、銀行の窓口で直接販売(仲介)できるようになった。その点から考えれば、このことは変額年金の窓販解禁以上のビックニュースといえるかもしれない。
  銀行の証券仲介業解禁をもって、個人の資産運用のコア商品といっても過言ではない「円預金」「外貨預金」「個人年金」「外貨建て年金」「投資信託」「株式」「国内債券」「海外債券」のワンストップショッピング化が銀行窓口で実現されることになる。これによって、上記の1から4の変化の兆しが一つのきっかけとなり、預貯金から投資型の金融商品へ急速な資金シフトが起こる可能性は十分考えられる。
  その行方を占う上でも、投資信託、変額年金そして外貨建て定額年金と、窓販解禁商品で次々と実績を残してきた銀行が、この証券仲介業でどれほどの実績を残すのか、ぜひ注目したい。
2004.12.06
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