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税制も企業再生を後押し
●  税制も企業再生を後押し
  自民党税制調査会(津島雄二会長)は7日、経営再建中の企業を対象にした新たな税制優遇策を2005年度税制改正に盛り込む方向で検討に入った。金融機関から債務免除を受けた企業に会計上発生する「債務免除益」への課税軽減措置を、これまでの法的整理だけでなく私的整理にも適用するというもの。これは、企業再生を税制面から後押しして、不良債権問題の最終解決につなげる狙いがあるようだ。
●  税制がネック
  企業が金融機関から債務の免除を受けたとき、その免除額は利益に計上され、税務上は課税対象となる。しかし、債務免除を受けるくらいであるから、当然、企業に税金を払う資金はない。そのため、債務免除を受けたものの税制がネックとなり、再生が思うようにいかず倒産に至るケースが今までにいくつもあった。
  整理回収機構(RCC)などを活用した私的整理の場合は、評価損が出ても債務免除益にかかる法人税は減免されない。例えば20億円の債務に対し15億円の債務免除を受けた場合、法人税の実効税率が40%であれば約6億円が納税額となる。このように、私的整理を活用した企業の再生を税負担が妨げていたのが実情である。現在は会社更生法など、法的整理の適用を受けた企業に限り、不動産などの資産評価損を債務免除益と相殺することができるのみである。
  債務免除益への課税を軽減できる措置を、これまでの法的整理だけでなく私的整理にも適用できるようになれば、こういった問題も解決される。
●  倒産処理の諸制度
  倒産処理の諸制度は、当該企業を最終的に清算するのか再建するのかによって、大きく「清算型処理」と「再建型処理」に分類できる。
  清算型処理とは、企業が営んでいた事業を廃業し企業が所有している財産を、債権者もしくは株主に一定のルールに基づいて分配することにより、企業そのものを消滅させる手続きをいう。
  再建型処理とは、債務者である企業と債権者との利害関係を調整しつつ、将来キャッシュフローを生むと予測される事業を存続させることにより、再建期間全体で単純な清算の場合よりも、より多くの債権の回収を図ろうとする手続のことである。
  一方、私的整理とは、債務者である企業が主要債権者と協議の上、債務整理を行う手法である。従って、その合意内容はすべての債権者には及ばず、あくまでも合意した債権者のみに効力がある。そのため法的整理の場合と異なり、主要債権者である金融機関だけに債権放棄などの支援を要請し、ほかの一般債権者の債権をカットしないようにすることが可能となる。最近、ゼネコン・商社・流通などで行われ、新聞紙上で大きく取り上げられた債権放棄はこの私的整理の手法に基づくものである。
  なお私的整理は、清算型処理にも、再建型処理にも適用可能と考えられる。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2004.12.13
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