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クレジット・デリバティブ市場急拡大、国内で3兆円超の取引
  企業の信用リスクを取引するクレジット・デリバティブ市場が急拡大している。日銀の統計では国内で3兆円を超えこの1年半で約2倍になった。
  クレジット・デリバティブとは、融資債権を持つ銀行が債権そのものには手を付けず、融資先の貸し倒れリスクだけを取り出して機関投資家などに引き受けてもらう取引のこと。景気回復や金融システム不安の後退で、内外の投資家が大手銀行の抱える信用リスクを積極的に引き受け始めたことが背景にある。
●  要領は自動車保険と同じ
  クレジット・デリバティブは保険料を支払う代わりに、交通事故が起きたときに保証してもらう自動車保険と同じようなものだ。銀行が企業の貸し倒れに備え、一定の保証料を投資家に支払う代わりに、貸し倒れが起きた場合には債権を投資家に引き渡し、元本の代金を受け取る。つまり自動車オーナーのように保険料を支払うのが銀行、損害保険会社と同じように万一のときを保証するのが投資家、交通事故が貸し倒れとなる。
  クレジット・デリバティブを使うと銀行は貸し倒れリスクを外部に切り離し、資産を健全化できる。自己資本比率を計算する際の分母を減らし、比率を上げられる。貸し倒れリスクが減れば、新規融資の拡大にも打ち込める。リスクを引き受けてもらうと相手方への保証料負担が生じるが、目先のコストがかさんででもメリットは大きい。
●  不良債権処理の進展が後押し
  主な引き受け手は国内では生命保険会社や地方銀行だ。企業業績の好転で倒産の危険性が減ったと判断し、取引に積極的になっている。引き受けの見返りとして得られる保証料収入の拡大を目指し、金融派生商品の取引体制を整備している。海外の大手投資銀行やヘッジファンドも、不良債権処理が進み日本の金融システムが健全性を取り戻しつつあるとみて、大手銀行からの信用リスク引き受けを増やしている。
  リスク引き受けの見返りに銀行が支払う保証料は、融資対象企業の信用力によって異なるが、肩代わり額の1〜2%程度が相場。企業の信用リスクの状況によって変動し、保証料が高いほど投資家へのリターンは高くなるが、その分企業の貸し倒れリスクも高い。より高い投資リターンが見込めるとして資金が急速に流入したため、保証料は低下傾向にあり、過熱投資のリスクを指摘する声も出始めている。
2004.12.13
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