>  今週のトピックス >  No.953
政府が初の「少子化社会白書」を発表
  政府は3日、初めて平成16年版「少子化社会白書」を閣議決定した。白書ではわが国の少子化の状況について、これまでの人口変化の動向、少子化の原因とその背景、少子化が経済社会に及ぼす影響、少子化社会対策の経緯などを説明している。そして少子化の流れを変えるためには、安心して子どもを生み育て、子育てに喜びを感じられる施策を積極的に展開することが重要だと指摘している。
●  少子化の原因は晩婚化・未婚化の進展
  1980年代以降、25〜34歳の未婚率が上昇しており、総務省統計局の「国勢調査」の資料によると2000(平成12)年では、男性の場合25〜29歳で69.3%、30〜34歳で42.9%、女性の場合、25〜29歳で54.0%、30〜34歳で26.6%が未婚となっている。35〜39歳の年代を見ても男性は25.7%、女性は13.8%と、未婚化が進んでいることをはっきりと表している。
  また同資料によると1970年代から2000年までの間に、晩婚化が急激に進んでいる。生涯未婚率も近年上昇し、2000年では男性12.6%、女性5.8%となっている。晩婚化・未婚化が進めば出生率の低下にも影響を及ぼし、少子化につながる。
  「適当な相手にめぐり合わない」「必要性を感じない」「自由や気楽さを失いたくない」「結婚資金が足りない」が未婚の理由に挙げられているが、女性の社会への進出が進み、就業率が高まっていることも一つの理由と考えられる。
●  少子化の経済的影響は深刻な問題
  少子化の経済的影響として、生産年齢人口や労働力人口の減少を通じて、経済成長率など経済の活力に対するマイナスの影響、消費や貯蓄に対する影響が挙げられる。生産年齢人口が減少していく中で、一定の経済成長率を維持していくためには、技術革新や規制改革、若年者の労働能力の開発、中高年者の労働能力の再開発など、労働生産性を高めていく取り組みが必要となってくる。また生産年齢の人口の減少をカバーしていく手段として、海外からの労働者の移民なども検討されることが予想される。
  さらに少子化は、社会保障制度の給付と負担のバランスを一層、崩していくことにもつながる。今でも若い世代は社会保障制度へ不信感を持っており、公的年金制度をあてにしていない。少子化と社会保障制度は、合わせて議論しなければいけない問題であり、今後も最優先に解決すべき社会問題である。
●  少子化社会対策は大胆な取り組みも必要
  少子化社会対策として、白書の中では男性を含めた働き方の見直し、多様な働き方の実現、仕事と育児の両立の推進、保育サービスの充実、地域のさまざまな子育てサービスを挙げている。実際に、これらのことは推進されているものの、少子化の完全な歯止めとなるほどの効果は出ていない。
  群馬県太田市では、市の男性職員に子どもが生まれた場合、対象者全員に合計6週間の育児休業の取得を義務付ける方向で検討に入っている。このような大胆な取り組みが全国的に行われれば、間接的な効果も含めると影響力は大きいだろう。同時にこのような取り組みもさまざまな問題があり、批判する人も多数いることは確かである。しかし、このような取り組みをきっかけにして政府を含めて国民全員が少子化問題を真剣に考えることにつながれば、大いに意義のあることだといえる。
参考:内閣府「少子化社会白書」
(庄司 英尚、社会保険労務士)
2004.12.27
前のページにもどる
ページトップへ