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新旧交代が進まない企業年金
●  厚生年金基金、適格退職年金の加入者は最盛期の3分の2
  低金利による企業年金の運用利回りの低下と、それに追い討ちをかけた退職給付会計の導入を契機として、2001年の「企業年金ビッグバン」は始まった。確定拠出年金法と確定給付企業年金法の成立、厚生年金基金の代行返上の開始などである。
  しかし厚生年金基金、適格退職年金から、確定拠出年金、確定給付企業年金へのバトンタッチは進んでいるのだろうか。
  最盛期には1,900件近かった厚生年金基金も、代行返上が進んだ現在では、昨年12月1日時点で従来の基金の形態のまま存続しているのは736件と最盛期の4割に過ぎない。将来部分の返上を終えた基金は234件。将来部分だけでなく、過去部分の返上をすでに終えた基金が546件。しかし、これまで解散した基金が371件で最盛期の2割の件数にあたる。
  最盛期に1,200万人以上いた加入者数も、現在は約670万人と半減した。過去分を返上した546件の厚生年金基金は、確定給付企業年金に移行しており、確定給付企業年金849件の3分の2を占めている。移行した厚生年金基金のうち、425件は基金型の確定給付企業年金に移行している。
  一方、適格退職年金は、最盛期は9万2,467件だったが、2004年3月末現在では、5万9,162件と、約36%減少している。また最盛期には1,078万人だった加入者数も、現在は777万人と約28%減少している。加入者数よりも件数の減少が著しいのは、小規模な適格退職年金が多く減少したことを示している。
●  企業年金を失った従業員は572万人
  新しい企業年金である確定給付企業年金は、厚生年金基金からの移行を除いた新設の件数は299件に過ぎない。加入者数は昨年3月現在で144万人である。
  もうひとつの新しい企業年金である企業型確定拠出年金は、昨年11月末現在で規約型では1,114件、企業型では3,311社が導入している。ちなみに加入者数は約102万人である(2004年9月末現在)。そのうち、581規約については、適格退職年金から資産を移換して発足している。
  また適格退職年金から中小企業退職金共済制度(以下、中退共)に資産が移換された件数は、昨年10月末で4,554事業所、加入者数は約12万人とわずかである。
  このように厚生年金基金は約530万人の減少、適格退職年金は約300万人の減少であり、合計830万人が企業年金を失っている。それに対して確定給付企業年金は144万人、確定拠出年金は102万人、中退共が12万人と合計で258万人に過ぎず、差し引くと572万人は新たな企業年金を得られていない計算になる。ラフな計算ではあるが、企業年金を失った従業員が多くいるのは間違いない。
参考:厚生年金基金連合会
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.01.05
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