>  今週のトピックス >  No.972
ストックオプションによる利益は「給与所得」と初判断
●  給与所得と最高裁判断
  ストックオプションで得た利益が「一時所得」か「給与所得」に当たるかが争われた訴訟で、最高裁は25日、課税当局側の主張を認めて「給与所得」に当たるとする初判断をした。過去の国税方針変更には一切触れなかった。
  国税の方針変更とは、1997年以前は課税当局の指導が「一時所得」であったのに対して、商法改正を受けた1998年から方針を変更し、ストックオプションによる利益は、ほぼ2倍の税額になる「給与所得」と見解を統一したことである。これにより、さかのぼって約2倍の税負担を強いられて、納税者の不満は今なお大きいものとなっている。
●  課税当局側・納税者側の主張
  国税側は、その会社に勤めているからこそストックオプションが付与されるはずという部分を強調。従ってこれは「労務の対価」であるから、偶発的な「一時所得」ではなく「給与所得」に当たると主張した。
  一方、納税者側は、株価動向という偶発的要素があり、いつ権利行使するかについては本人の判断であるという部分を強調して、「労務の対価」ではなく「一時所得」に当たると主張している。
●  ストックオプションとは?
  ここで、ストックオプションについて説明しておこう。ストックオプション制度とは、会社が取締役や従業員に対して、あらかじめ定められた価額である「権利行使価額」で会社の株式を取得することができる権利を付与し、取締役や従業員は将来、株価が上昇した時点で権利行使を行い、会社の株式を取得し売却することにより、株価上昇分の利益が得られるというものだ。
  利益額が、企業の業績向上による株価の上昇と直接的に連動することから、権利を付与された取締役や従業員の株価に対する意識は高まり、業績向上へのインセンティブとなり、モチベーションアップにつながるというメリットもある。
  ストックオプション制度は、平成9年5月の商法改正で導入され、平成14年4月施行の商法改正において「新株予約権の無償発行」として新たに整備された。
●  さかのぼっての課税に批判
  今回の最高裁判決を受けて、原告の米アプライド・マテリアルズ社の日本法人元社長である八幡恵介氏は、記者会見で、「給与所得か一時所得かの判断には従うが、国税が方針変更前にさかのぼって課税した不当さは認めて欲しかった」と発言した。また「最高裁が行政を追認したことには承服できない」と不満の表情を浮かべた。
  同じストックオプション課税をめぐる訴訟で上告中の米インテル日本法人元会長の西岡郁夫氏も記者会見で、「(課税当局側が)指導が間違っていたと、後から課税できるなら、納税者は将来の予測ができない」と指摘した。
  今後発生するストックオプションについて、「給与所得」として申告するのは仕方ないとしても、課税当局側が当初指導した通りに「一時所得」で申告した分まで、さかのぼって課税するのは、税の信頼を損なう、間違った判断ではないだろうか。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.01.31
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