>  今週のトピックス >  No.975
増え続ける企業の福利厚生費負担
●  法定福利費は大幅増
  企業の福利厚生費等の2003年度実績の調査結果が、日本経団連から報告された。
  企業が従業員一人当たりに負担する法定福利費(健康保険・介護保険、厚生年金保険、雇用保険・労災保険などの会社負担分)は月額で7万2,853円と、前年度の6万8,552円と比べて6.3%の大幅増加となった。2003年度から社会保険料の算定に総報酬制が導入され、保険料が増加したことが大きい。
  一方、社宅や慶弔金など、企業独自の福利厚生施策の費用である法定外福利費は2万7,958円で、前年度の2万8,203円からほぼ横ばいとなっている。
  また退職一時金や企業年金掛け金などの退職金費用は、前年度の8万7,283円から9万2,037円と5.4%増加している。
  これにより、福利厚生費(法定および法定外の合計)と退職金費用の合計は19万2,848円となり、前年度比4.8%増となった。2003年度の月額の現金給与総額は56万5,935円で、前年度比1.3%の小幅増にとどまっているため、現金給与に対する福利厚生費・退職金費用の割合は34.1%となり、前年度より1.2ポイントも上昇した。
  現金給与を100とした場合の法定福利費、法定外福利費、退職金費用の割合を時系列に追ったものが下の図表である。30年前の1973年度は、三つの費用を合計しても16%程度に過ぎなかった。
【図表 福利厚生費・退職金費用の現金給与に対する割合の推移】
【図表 福利厚生費・退職金費用の現金給与に対する割合の推移】
●  現金給与以外の人件費は倍増
  社会保険の充実、少子高齢化の進展とともに社会保険料は増加を続け、1973年度の現金給与に対する法定福利費の割合は5.9%だったが、今や12.9%と倍以上になっている。
  退職金費用は4.2%から16.3%と4倍増である。これは、勤続年数の長期化と給与の上昇により、退職金額が高騰した結果といえる。特に月額給与の実額が伸び悩んだ1990年代後半以降は、人員調整に伴う退職金支給も重なり、対現金給与割合は急速に高まった。
  それに対して法定外福利費は1973年度の5.8%から4.9%へとやや微減となっている。法定福利費や退職金費用の増加による企業負担増のしわ寄せが、企業の法定外福利費の抑制につながっている。
  その結果、福利厚生費、退職金費用の合計額の現金給与に対する割合は、1973年度の15.9%から、2003年度は34.1%と倍以上に高まった。今後も年金、介護、医療とも社会保険料率の上昇が確実視されていることから、企業の総額人件費はますます圧迫されていく。
参考:(社)日本経財団体連合会「第48回 福利厚生費調査結果(2003年度)の概要」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.02.07
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