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国民年金未納改善せず
●  未納改善せず、2,600億円不足
  社会保険庁の村瀬清司長官は、国民年金の保険料収入が当初予算に比べて2,600億円不足するとの見通しを明らかにした。また社会保険庁が同時に発表した昨年4月から11月分の納付率も、ほとんど改善していなかった。そのため、昨年の秋に策定した改善計画の達成が極めて難しい情勢となった。
  社会保険庁は昨年から不祥事が続き、昨年7月に損害保険ジャパン副社長だった村瀬氏が、民間出身者として初めて社会保険庁長官に就いた、という経緯がある。その村瀬氏は、2004年度の納付率の目標を、昨年度より2.3ポイント改善する65.7%に掲げ、2007年度は納付率を80%にすることを目指していた。
  しかし参院予算委員会で、今年度の国民年金の保険料収入は1兆9,600億円と述べ、2兆2,200億円の予算を大きく下回る(2,600億円不足)との見込みを示した。
●  納付率上昇の理由は、保険料免除者の増加
  2003年度末の被保険者数は2,240万人で、前年度に比べて3万人増加した。また国民年金の納付率は63.4%で、未納率は36.6%だった。納付率は過去最悪だった2002年から0.6ポイント上昇し、1992年度以来、11年ぶりに改善した。ただし、この納付率上昇の要因は、保険料免除(猶予を含む)者が増えたためで、仮に保険料免除者を納付対象者に算入して計算し直した場合、昨年度の納付率は51.4%となる。
  昨年度の納付率を年齢別にみると、40〜44歳が低下した以外は上昇しており、特に34歳以下の若年層の上昇幅が高かった。しかし総体的には、若い世代ほど納付率が低いという状況は続いており、20〜24歳の納付率(48.6%)は5割を切ったままである。
●  政府は、若年層が期待できる年金対策を示すことが必要
  若年層の国民年金未納の背景には、年金制度に対する不信感がある。人口減少経済、それに伴う急速な少子高齢化社会、さらには度重なる政治家や官僚の不祥事。これでは、払った分でさえ将来受け取れるのかどうか分からないと考えるのも、うなずける。
  政府には、これからの人口減少経済に見合った年金設計を示して、積極的に若年層が国民年金を払おうと思えるようにしてもらいたいものだ。
  単純に徴収を強化するだけではなく、「北風と太陽」の話を思い出してほしい。
参考:社会保険庁「平成15年度国民年金納付実績と今後の収納対策」
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.02.07
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