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自殺者数高止まりの背景
●  自殺者は年間3万人台で推移
  「自殺者3万人時代」といわれて久しいが、先月、厚生労働省から平成15年までの自殺死亡の概況が報告された。これは毎年の人口動態統計の特殊報告として位置付けられ、これまでも不定期にまとめられてきた。
  自殺者は1997年の2万3,494人から1998年に3万1,755人に急増して以来、毎年3万人前後で推移しており、2003年には3万2,109人と過去最高を記録した。
  1998年は前年の1997年に山一證券、北海道拓殖銀行の破たんなどがあり、雇用環境が一段と悪化した年である。自殺者急増の背景には、こうした雇用・経済環境の激変があったとされる。それを裏付けるものとして、警察庁が発表する「平成15年中における自殺の概要」がある。これによると、2003年の遺書のある男性の自殺7,806件のうち、健康問題が2,369件、家庭問題が649件であるのに対し、経済・生活問題が3,309件、勤務問題が569件と多い。
  ちなみに、遺書のある女性の自殺2,581件のうち、半数以上の1,521件は健康問題であることを見ると、男性特有の傾向である。
  図表1に示す通り、自殺者数は従来から男性が多いが、1998年の急増は男性の自殺者増が理由であり、前述の経済環境の変化が背景にあるとされている。図表2の年齢階級別の自殺者数を見ても、それが裏付けられる。
  女性の自殺者は年齢階級の上昇とともに増え、健康の衰えや慢性疾患の罹患などの健康問題であることを裏付けている。一方、男性は80歳代も自殺が多いが、50歳代にもうひとつ自殺率のピークがある。これは、雇用などの経済問題が背景にあると考えられる。
【図表1 男女別自殺者数の年次推移】
【図表1 男女別自殺者数の年次推移】
【図表2 年齢階級別自殺者数(2003年数値)】
【図表2 年齢階級別自殺者数(2003年数値)】
参考:厚生労働省「自殺死亡統計の概況(2005年1月)」
警察庁「平成15年中における自殺の概要資料」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.02.14
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