>  今週のトピックス >  No.985
過重労働による健康障害を懸念している企業は38.3%
  東京労働局は2月3日、2004年の「従業員の健康管理等に関するアンケート調査」の結果を発表した。この調査結果によると、企業の38.3%が過重労働による従業員の脳・心臓疾患の発症を懸念している。しかし過重労働による健康障害防止のため「年休の取得促進」「残業の削減」を実施した企業は、いずれも低い割合にとどまっている。調査対象が都内に本社を置く、規模300人以上の企業という条件ながら、過重労働による健康障害を防止する観点からの労働時間管理と健康管理などがいまだ不十分な実態が認められた。
●  長時間労働があるまたは今後可能性があるとする企業は、57.9%に増加
  脳・心臓疾患の発症との関連性が強くなるとされる長時間労働(月100時間または2〜6カ月を平均して、月平均80時間を超える時間外・休日労働)があるとする企業または今後可能性があるとする企業は57.9%で、平成15年度調査の54.0%から3.9ポイント、平成14年度調査の47.7%から10.2ポイント、それぞれ増加している。長時間労働は、結果的に残業代未払いで、労働基準監督署に是正勧告を受けることにつながるケースも多い。各企業は、労働時間短縮に取り組まなければならないことは分かっているが、現状は対応できていないというのが本音であり、頭を悩ませている。
●  「年休の取得促進」「残業の削減」を実施した企業の割合は低い
  過重労働による健康障害防止運動を契機に、過重労働による健康障害防止のために具体的な措置を実施した企業は70.1%と、15年度に比べて8.3ポイント増加した。
  月100時間または2〜6カ月を平均して、月80時間を超える時間外・休日労働があった企業、または今後このような長時間労働を行う可能性があるとする企業について、健康障害防止のために講じた具体的措置を見ると、何らかの措置を講じた企業の割合は78.2%に増加しているものの、「時間外労働の削減(6.6%)」や「年次有給休暇・連続休暇の積極的取得の推進(19.2%)」といった労働時間の減少に直接つながる対策を実施する企業割合は低い率にとどまっている。
  「過重労働による健康障害防止運動」については604社(56.4%)が知っているとし、詳しい内容までは分からないが、当該運動を知っているとする企業と合わせると88.1%という高い割合で認知されているにもかかわらず、具体的な措置までは実施できていない。今後は「詳しい内容まで知らないが運動を知っている企業」に内容を知ってもらうためにどのような工夫をしていくかがポイントとなるだろう。
●  今後の行政の対応
  東京労働局は、今後も「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等」の周知を図るとともに、引き続き監督指導、個別指導等により労働時間管理の適正化および健康管理の徹底を推進し、企業における過重労働による健康障害の防止対策の進展を図っていく方針を掲げている。メンタルヘルス対策など課題はたくさんあるが、今後も東京労働局の活動には注目していきたいところである。
参考:東京労働局「従業員の健康管理等に関するアンケート調査」
(庄司 英尚、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2005.02.21
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