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贈与で取得したゴルフ会員権の名義書換料は取得費
●  最高裁がこれまでの取り扱いを全面的に否定
  贈与により取得したゴルフ会員権の名義書換手数料は、その会員権の取得費にあたるとして、2月1日、最高裁第三小法廷は納税者の主張を認める判決を下し、国側(国税当局)の敗訴が確定した。今回の判決は、これまでの国税当局の取り扱いを全面的に否定するものとなった。
  この判決を受けて国税庁は、贈与・相続により取得した資産を譲渡した場合の、譲渡所得の取得費の取り扱いを改めることを明らかにしている。
  この事件は、ゴルフ会員権を父親から贈与され、名義書換手数料を支払って会員となっていた子どもが、その後、会員権を譲渡して、その名義書換手数料を取得費として申告したところ、税務署がこの手数料の経費算入を認めなかったため訴訟に及んでいた。
●  なかったものとして取り扱われてきた付随費用
  土地・建物やゴルフ会員権を譲渡した場合の譲渡所得の計算は、これらの資産の譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いて行う。その資産を贈与や相続によって取得している場合、譲渡価額から差し引くことができる取得費は、贈与者や被相続人から取得者に引き継ぐこととされている。またその取得時期も、贈与者や被相続人の取得時期を引き継ぐこととされている。従ってこの場合の取得費は、贈与者らの購入代金や購入手数料などを基に計算することになる。
  贈与や相続の際、通常、贈与者らの名義を取得者に変更するため、不動産の場合は登記費用、ゴルフ会員権の場合は名義書換手数料などの付随費用を支払うことになる。従って取得者が支払ったこれらの費用については、上記のことから、譲渡所得の取得費には算入できないこととして取り扱われてきた。
  これまで所得税法では、贈与などにより資産を取得した者が、その資産を譲渡した場合の、譲渡所得の金額の計算について、「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」旨を定めていることから、中間の贈与の事実はなかったものと扱うほかなく、受贈者が自己への所有権移転のために支払った費用があったとしても、無視せざるを得ないとしてきた。
●  5年以内のものであれば所得税の還付の対象に
  今回の最高裁判決を受けて、国税当局が取り扱いを改める代表的な費用は、ゴルフ会員権の名義書換手数料や不動産登記費用のほか、贈与・相続などの際に通常支払われる名義変更のための費用が取得費の対象となる。例えば、不動産取得税、株式の名義書換手数料や特許権などの権利についての登録費用である。なお取得費に算入できるのは譲渡資産に対応するものに限られ、特に不動産登記費用については、ほかの資産とともに名義変更する場合が多いので注意が必要だ。
  これらの費用を過去に支払ったことがあれば、所得税が還付されるケースがある。例えば、贈与で取得した土地を譲渡して申告している場合、名義を変更する際に登記費用を支払っていれば、これを取得費に加えて再計算し、税務署に更正の請求などの手続きをすれば所得税が還付される。ただし申告期限からすでに5年を経過している年分の所得税については還付できないこととされている。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.02.21
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