>  今週のトピックス >  No.992
時間外取引とTOB
●  ライブドアとフジテレビ
  ニッポン放送の株式をめぐるライブドアとフジテレビの買収合戦は、法廷に争いが持ち込まれるなど緊迫の度合いを深めている。
  売上高300億円のベンチャー企業が、800億円もの巨額の資金を米リーマンブラザーズ証券という外資から調達した。そしてその資金で、東京証券取引所(以下、東証)の時間外取引という手法で3分の1超の株を買い集めた。しかも、買収を狙う相手は高い公共性が求められる一般ラジオ局だ。さらにライブドアは、ニッポン放送を通じて、グループ企業のフジテレビなどにも影響力を及ぼそうとしているもようだ。
●  時間外取引
  そこで気になるのが、まず「時間外取引」という手法だ。これは東京証券取引所(東証)が特例で認めている株式の取引方法のことである。
  通常、株式取引というのは、平日午前9時〜午後3時に証券取引所を通じて行われる。しかし、投資家の多様な取引ニーズに対応するため、東証が1998年に時間外取引市場の「ToSTNeT(トストネット)−1」を設置した。これが「時間外取引」の始まりである。当初は、ライブドアが行ったような大量の株式売買を想定していなかった。
  「時間外取引」では、証券市場が開いていない午前9時前や午後3時以降に株式を売買できる。売買価格は、直前の市場価格を基準に一定の幅が決められている。「時間外」でも、市場内取引の位置付けで東証に取引結果が記録される。つまり市場内取引ということは、証券取引法のいわゆるTOB規制を受けないということでもある。まさにライブドアは、この仕組みを利用して大量のニッポン放送株の購入を行った。
  証券取引法(証取法)では、上場企業の発行済み株式の3分の1超を市場外で買う場合、「相対取引」のため、大量の市場外取引が行われれば影響を受ける一般投資家の保護が必要であると、価格や買い付け目標の公表などを義務付けている。そして、その投資家を保護する制度がTOB(株式公開買い付け)といえる。
●  TOB(株式公開買い付け)
  ライブドアが時間外取引という手法でニッポン放送株の大量購入を行ったのは、TOB規制を受けないためだったともいえる。
  またその後、ニッポン放送株について、フジテレビによるTOBが行われることになった。
  では、TOBとはどういった制度なのか。TOBについては、証券取引法に規定がある。同法27条の2によると、「その株券、新株予約権付社債券その他の有価証券で政令で定めるもの(以下、この章及び第二十七条の三十の十一(第四項を除く)において「株券等」という)について有価証券報告書を提出しなければならない発行者の株券等につき、当該発行者以外の者による取引所有価証券市場外における買付け等(株券等の買付けその他の有償の譲受けをいい、これに類するものとして政令で定めるものを含む。以下この節において同じ。)は、公開買付けによらなければならない。ただし、次に掲げる株券等の買付け等については、この限りでない」とされている。ただし書き以後は、公開買い付けによる手続きが必要になるのが「市場外取引における買付け等」に限定されていることを示している。
  ライブドアとフジグループのどちらが正しいかは、この時点では言及できないが、資本の論理を徹底しすぎると、うまくいかないことの一つの表れであるといえる。
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2005.03.07
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