>  今週のトピックス >  No.994
偽造キャッシュカードによる被害は雑損控除の対象
●  急増する偽造キャッシュカードでの被害
  偽造キャッシュカードによる預金引き出しの被害が急増している。全国銀行協会のまとめでは、昨年4〜6月に53件、金額で1億8800万円、7〜9月に68件、2億7100万円だったものが、10〜12月には186件、被害総額3億4800万円となった。1年間で92件、2億7700万円だった2003年度を3カ月間で上回ったのだから、その急増ぶりは著しいものがある。また昨年10〜12月には盗難通帳による不正払い出しも80件、1億6600万円報告されている。
  これらの被害を受けた預金者に対しての補償はほとんどなされていないようで、金融庁を中心にその検討が急がれている。しかし、税金の面では救済措置がある。国税庁は、これらの被害は確定申告において雑損控除の対象となるとの見解を示している。
●  「振り込め詐欺」や「架空請求」などの被害は適用外
  雑損控除は、災害や盗難などによって生じた損失や、それに関連した支出を基に一定額を所得控除するものだ。
  雑損控除額の計算は、
  1. (損失額−保険金などでの補てん金額)−総所得金額×10%
  2. {(損失額−保険金などでの補てん金額)のうち災害関連支出の金額}−5万円
のうちいずれか多い金額だ。その年の所得金額から控除しきれない場合は、3年間を限度に翌年以降に繰り越すことができる。
  雑損控除の適用対象となる損害の原因としては、震災や風水害などの自然災害のほか、火災などの人為的な災害、盗難や横領などがある。ただし詐欺や脅迫の場合は雑損控除の対象とされていないことから、いわゆる「振り込め詐欺」や「架空請求」などの被害には適用されない。
●  被害預金者が直接請求できない被害届出証明書
  偽造キャッシュカードによる預金引き出しなどの被害を受けた場合、確定申告時に被害届出証明書を添付すれば、雑損控除の適用を受けることができる。ここで問題なのは、偽造キャッシュカードによる被害の場合は、ATM(現金自動支払機)の管理銀行が被害者とみなされるため、その銀行が警察に被害届出を提出し、被害届出証明書を受け取っていなければならない。
  つまり、直接の被害者である預金者が、直接被害届出証明書の請求をできないため、時間がかかる。国税庁が、偽造キャッシュカードによる被害は雑損控除の対象となるとの見解を示したことを受けて、全国銀行協会では、警察が発行する被害届出証明書が、被害を受けた預金者に、より早く渡せるようにルールづくりを行って対応している。
  しかし、どうしても時間がかかることは否めない。昨年被害を受けた分(平成16年分)について所得税の雑損控除を適用する場合は、3月15日が申告期限となる。被害を受けた預金者の手元に被害届出証明書を届かせるためには、できるだけ早めの対応が必要だろう。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2005.03.07
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