>  今週のトピックス >  No.995
中退共の最新の状況
●  欠損の解消が優先
  中小企業向けの退職金制度である中小企業退職金共済制度(以下、中退共)に新しい動きが出てきた。
  2005年1月末現在の加入状況は、加入企業数38万9,407社、加入者数266万3,544人となっている。ちなみに1企業あたりの平均加入者数は6.8人である。
  加入企業は、2000年度の42万1,708社をピークに4年連続減少している。一方、加入者数は、1996年度の280万6,352人から減少傾向が続いていたが、ここ2年間増加に転じている。
  近年、運用環境の低迷によって中退共の資産運用も厳しさを増していた。中退共は予定利回りを保証していることから、予定利回りと実際の運用利回りの間に逆ザヤが発生している。2003年度末において中退共の年金資産は2兆9,886億円であったが、その一方で、将来の退職金支払いのための責任準備金が3兆1,706億円に及ぶことなどによって、繰越欠損金は2,673億円と、年金資産の1割近いほど膨らんでいる。こうした状況を踏まえて2002年11月には予定利回りが見直され、それまでの年3%が1%に引き下げられた。また実際の運用利回りが予定利回りを超えた場合に支払われる付加退職金についても、今後は極力凍結し、予定利回りを超える剰余金は付加退職金とするのではなく、繰越欠損の穴埋めに回されることになる。なお2005年度については、余剰金の半分を付加退職金に、残りの半分を穴埋めに回すことになった。
  加入企業数や加入者数の減少の背景には、予定利回りの低下による魅力の低下に加えて、欠損金の存在による制度自体への信頼性が低下していることが挙げられる。
●  適年移換による加入者増
  こうした中で、加入者数が増加に転じたのは、2002年4月から適格退職年金からの資産の移換ができるようになったためである。これは2012年3月で適格退職年金が廃止されることに対する措置である。
  適格退職年金から資産が移換されて発足した中退共は、2002年度から2005年1月まで4,880企業、加入者数は13万1,250人に及ぶ。中退共への移換は、1企業あたりの加入者が26.9人となっており、既存の中退共の6.8人を大きく上回る。これが加入企業数が減りながらも近年加入者数が増加している大きな理由と考えられる。また資産を移換する企業は予定利回り1%で算定された健全な資産である。そのため今後も資産の移換が続けば、年金資産と責任準備金の逆ザヤは縮まり、欠損金も縮小することが期待される。
  適格退職年金からの資産移換を加速するため、2005年4月からは資産移換の制限が撤廃された。これまでは、過去10年分の勤務に対応する年金資産だけが移換でき、それを超える金額は移換時点で従業員に分配されてきたが、4月からは適格年金資産全額が移換できるようになる。
【図表 中退共の加入企業と加入者の推移】
【図表 中退共の加入企業と加入者の推移】
参考:独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(機構・中退共本部)HP 発表資料
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン主席コンサルタント、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2005.03.14
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