>  今週のトピックス >  No.998
日本企業のM&Aが急増―外資からの買収警戒
●  年2,000件を超える
  国内で企業の合併・買収(M&A)の件数が増えている。M&Aとは企業が別の企業を吸収したり、事業を買ったりして、企業規模の拡大や企業価値の向上を目指す行為だ。一般の事業会社だけでなく、投資会社が企業を買って価値を高め、さらにより高い金額で売って売却益を得る目的のM&Aもある。景気が回復に向かう中、収益力をつけた日本企業がより強くなるために企業買収に乗り出すケースや、外資企業の買収を避けるために、合併でさらに大きな会社を目指すケースが以前より多くなっている。
  M&A仲介業者レコフ(東京・千代田)の調査によると、2004年の国内企業のM&Aは件数、金額ともに過去最高だった。件数では2003年と比べて28%増の2,211件と、初めて2,000件を上回った。このうち金額が明らかになっている1,250件の合計は56%増の9兆300億円となった。
●  国際競争厳しい製薬で相次ぐ
  なかでも大型合併が相次いでいるのが薬品業界だ。今年4月に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併してアステラス製薬が発足するのを皮切りに、10月には三共と第一製薬が合併して第一三共が発足する。また大日本製薬と住友製薬が合併して大日本住友製薬も発足し、業界地図が大きく変わる。
  製薬業界の再編の背景には巨大製薬外資に買収される危機感がある。製薬最大手、武田薬品の企業規模を表す株式時価総額(発行済株式数に株価を掛けて算出)は4兆5,000億円。しかし世界最大の製薬会社、米国のファイザーの時価総額は武田製薬の4倍なのである。
●  外資の乗っ取りが解禁に
  政府は、商法などの企業関連の法律をまとめた「会社法」の制定を目指して、今国会に法案を提出する。成立すれば2006年には外国企業が株式交換で日本企業を傘下に収める「三角合併」が解禁となる。時価総額が大きい外資が現金でなく株式を使って、これまでより簡単に日本企業を買収できるのだ。
  株式を公開している会社を買収する場合、買収される企業が合意していなくても、市場でその会社の株式を買い占めれば事実上乗っ取ることができる。これが敵対的買収だ。ライブドアがフジテレビ傘下のニッポン放送に仕掛けているのが、この敵対的買収。新しい会社法が制定されると国内の企業同士だけでなく、規模の大きい外国企業から敵対的買収を仕掛けられる可能性が高くなる。これを防衛するには、国内の企業同士で合併したり、企業を買収したりして企業規模や企業価値を向上させなければならない。M&Aは今後も増え続けそうだ。
2005.03.14
前のページにもどる
ページトップへ