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銀行による格付を意識した保険のススメ・応用編
  基礎編では銀行による格付の仕組みを説明しました。
  この格付によって企業が評価され、点数の高い企業から順番にランク付けされます。その中で、いわゆる債務者区分が「正常先」に位置づけられている場合は、さほど問題はありません。問題があるのは、その下の債務者区分である「要注意先」、とりわけ「要注意先」の中にある「要管理先」に位置づけされていると、企業経営上問題があります。(ちなみに中小企業はほとんどがこの辺りに位置づけされます。)
ケース
  わたしは中小企業経営者ですが、当社に対する銀行での格付評価(債務者区分)は「要注意先」となっているようです。融資金利も高く、経営コスト上かなり問題です。「格付」を上げる方法はあるのでしょうか?
格付によって金利の負担コストがこんなに違う!
  ある都市銀行の例ですが、「下位正常先」の金利は3.2%、「要注意先」の金利は5.3%となっています。金貸し業における原価である市場金利が0.05%で、銀行のコスト率と利益率の合計が1.45%でしたので、先ほどの金利の差は、そのまま銀行におけるリスク率の差=格付の差となります。5,000万円の借入があったら、3.2%と5.3%の金利差があれば、ざっくり年間100万円の差となります。これは経営上大きなコスト増と言えるでしょう。
  また、銀行が銀行営業マンに目標を課すときに、「正常先」については「貸し出し目標」が設定されますが、「要注意先」以下では「回収目標」が設定されます。これでは銀行による企業の扱いが全然違ってきますね。
  こういったことを考えると、格付を上げておく、つまり格付が上がるように決算を組むということは、この不況の中、企業経営上非常に重要な事柄であることを理解していただけるのではないでしょうか。
格付を上げる4つのポイント
  そこで、格付がどうやったら上がるのかということを考えてみます。
  格付審査の中で大事な定量評価の中身を見ていくと、安全性・収益性・成長性規模・返済能力の4つの項目に分かれています。それぞれの項目ごとに、様々な分析指標による点数配分がされています。例えば、安全性の中でも特に配点の高いものに「自己資本比率」というのがあります。これは、自己資本を総資産で割って求めるものです。ちなみに、TKC経営指標によると、黒字企業の平均自己資本比率が27%で、赤字企業の平均が−4%となっています。それ以外にもギアリング比率や流動比率など多くの分析指標があり、それぞれで評価が高ければ格付が上がっていくようなシステムになっています。
  しかし現実問題として、これらの分析指標を直接上げていこうと思って経営を行うことは不可能に近いでしょう。というのは、そもそも分析指標の数は膨大なものだからです。
  そこで、それらの分析指標のポイントを4つにまとめてみました。つまり、以下の「格付アップ4つの視点」を意識して経営を行うと、格付が上がるようになっているのです。
格付アップ4つの視点
1.償却前営業利益の増加
2.自己資本の増加
3.総資産の圧縮
4.有利子負債の圧縮
格付アップの方法をある程度理解していただいたうえで、最後に「格付」を意識した保険加入の提案例を考えてみましょう。
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  例えば経営者保険として逓増定期保険などに加入した場合、普通、保険料という科目で会社の損益計算書上の「販売費及び一般管理費」に計上されます。つまり営業利益より上にくる費用ですから、結果「償却前営業利益」を圧迫します。
  そこで、その保険を解約したときには営業外収入として処理することも考慮に入れて、支払い保険料を営業外費用として処理することもありえるのではないでしょうか?
  また、税務上節税対策となる「短期前払費用」を活用するために、月払いの保険を年払いに切り替えたときには、その今年余分に支払った来年分の保険料についても本業外ということを考えると営業外費用としての処理も考えられのではないでしょうか。

  これからは、企業経営者の関心が高い「格付」というものも、保険営業には大事な要素になってくると思います。経営者と接するときに、「格付」の概要をこちらから説明し、銀行が今考えていることを伝えてあげると喜ばれるのではないでしょうか。さらに保険の加入に当たっても、格付を意識した保険加入法を伝授してあげると親切だと思います。
  ぜひ提案に生かしてみて下さい。
2005.09.12
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁