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相続税法(旧)26条が無くなります
  今回は、「いま」ぜひ知っておいてほしい税金トピックスについてお話します。
  それは、タイトルにある通り、「相続税法旧26条が経過措置を経て平成18年3月31日に廃止」されるということです。このことは、これから来年にかけて見込み客や既存客などから質問が来るかもしれませんよ。
ケース
  父親が子供を被保険者・受取人として3,000万円の生命保険契約を結んだとします。そしてそのための生命保険料として1,000万円を父親が保険会社に払い込み、その後その父親が亡くなりました。
平成18年3月31日までの取り扱い
  まずは相続税法旧26条のおさらいから。
  上記のケースの場合、父親を被相続人とする相続税の申告書上では、その生命保険の評価は、いずれの受取保険金3,000万円ではもちろんなく、かといって支払い保険料1,000万円でもありません。こういったときの評価は、いわゆる相続税法旧26条に記載されていた「生命保険契約に関する権利」という評価方法になります。
  つまり、支払保険料×70%−受取保険金×2%です。
  (注)一時払いで保険料を払った場合は、その一時払い保険料で評価
  今回のケースでは、1,000万円×70%−3,000万円×2%=640万円が生命保険契約に関する権利の評価となり、その金額で相続税税を計算することになります。
  ということは、単純に現金で持っていた場合には1,000万円で評価されたものが子供を被保険者・受取人とする保険契約をするだけで、その評価が360万円下がって、640万円の評価に変わるのです。

  というのが、今までの取り扱いでした。この取り扱いが可能なのは来年平成18年3月31日までとなっています。ちなみに一部誤解されている部分があるので解説しておくと、来年3月までに保険契約すれば前出の保険料7割評価(生命保険契約に関する権利の評価)が出来るということではありません。来年3月31日までに生命保険契約に関する権利を相続または遺贈により取得した場合に、保険料の7割評価が可能となるということです。
現在は経過措置期間中
  相続税法旧26条の廃止が決定されたのは、平成15年の税制改正時です。しかし一気に廃止とすると問題があるとして、所要の経過措置を設けました。その経過措置とは、平成18年3月31日までに相続または遺贈により取得した生命保険契約に関する権利の評価については、従来の「保険料7割評価」か、新しい規定である「解約返戻金評価」のどちらかでOKという内容です。
  もともと、「支払保険料×70%−受取保険金×2%」という計算式は、「解約返戻金相当額」を表すために作られた計算式です。しかし最近の保険商品の多様化により、実態を表さなくなってきたので、平成15年に税制改正が行われたのです。
平成18年4月1日からの取扱い〜財産評価基本通達214を新設
  ということで、改正後の評価方法は、財産評価基本通達214で、「生命保険契約に関する権利の価額は相続開始時において契約を解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額によって評価すること」と規定されました。つまり、来年4月1日以後は、解約返戻金相当額が相続税計算上の権利の評価となるわけです。
  また、解約返戻金以外に支払われることとなる前納保険料の金額や剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額を解約返戻金に加算します。逆に、解約返戻金の額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額がある場合には、その金額を減算した金額で解約返戻金を計算します。
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心得ておきたいこと
  この改正において心得ておくことを2つほどご紹介します。
  1つは、来年3月までの間にメディアなどでも今まで以上に紹介されるかもしれませんから、一般の方が敏感になって、その内容の解説を希望されたり、今後の対応について相談されたりする可能性があるということです。ですから、まずはその内容理解が大事です。
  そして相続税法旧26条がなくなったからといって、即「生命保険契約に関する権利」という保険設計商品がダメであるということではありません。解約返戻金で評価するということを逆手にとって、それで相続税対策に使える商品もあります。これが2つ目の心得ておくことです。
  今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことが出来れば、幸いです。
2005.10.17
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁