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税理士が見る生命保険販売のツボ
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生命保険で経営者の遺族を守る
ある日のテレビドラマで、税金にまつわる以下のようなシーンが出てきました。これを今回のケースとして考えてみましょう。
相続放棄しても生命保険だけは受け取れる!?
  税務調査官・健介は、税金を滞納しているうどん屋のご主人に税金督促のためやって来ました。ところがご主人は、税金50万円を滞納したまま先日亡くなってしまったそうです。しかも、他に借金が500万円ほどあるようです。
ケース
うどん屋の
奥さん
「主人が亡くなって生命保険がもうすぐ700万円入りますので、それまで待ってくれませんかねえ」
健介 「ダメです」
奥さん 「え?」
「えーっと、亡くなられたご主人には借金が500万円ほどあるんですよね。ご主人には何か主だった遺産がありましたか?例えば、このご自宅とか?」
奥さん 「この家は借家だし、預金はほぼ0円に近いし、あるのはこの生命保険金700万円だけなんですよ。それで滞納税金を払いますから、今日はお引取り願えませんか?」
健介 「ですから、ダメです」
奥さん 「え!!??」
健介 「生命保険金を除けば、亡くなられただんなさんの遺産は、マイナスですよね。500万円ほどの借金と、滞納税金50万円だけですもんね。それであれば、相続放棄(そうぞくほうき)して下さい」
奥さん 「相続放棄?相続放棄って、遺産の相続をしないということですよね?ダメですよ、この保険金が受け取れないじゃないですか?」
健介 「いえ、相続放棄をしても生命保険金だけは受け取れるんです。生命保険金は、受取人固有の財産ですから」
奥さん 「ということは、借金と滞納税金を払わずに、生命保険金だけ受け取ることが出来るのですか?」
健介 「はい。お亡くなりになってから3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄を申請すると、借金や滞納税金を払う必要がなくなります。もちろん、財産も受け取ることは出来ませんが。しかし、生命保険金については受け取ることが出来ます」
奥さん 「すごい!でも、そんなこと税務調査官が教えていいんですか?払っていない税金を取りに来た人が、その税金を払わなくて良い方法を教えてもいいんですか?」
健介 「いいんです、いいんです。我々税務調査官は、借金取りではありませんから・・・」
  こんな素晴らしい税務調査官が現実にいるかどうかはさておき、経営者の遺族の生活を守るための「生命保険の活用」は、案外知られていません。
  こんな素晴らしい税務調査官が現実にいるかどうかはさておき、経営者の遺族の生活を守るための「生命保険の活用」は、案外知られていません。
相続放棄と限定承認
  故人の財産が債務超過で明らかにマイナスとなると分かっている場合には、それを相続すると今度は相続人が借金取りに追われることになります。それを防ぐのが相続放棄です。相続放棄をすると借金を引き継がなくていい代わりに、プラスの財産も引き継ぐことも出来なくなります。手続きとしては、相続開始から3カ月以内に故人が生前住んでいた場所の家庭裁判所に申し出ることにより行います。これは他の相続人にも知らせてあげないといけないことでしょう。というのは、自分だけが相続放棄をしたら、残された相続人に負債がいくということになるからです。
  また、財産がいくつかあって負債もそこそこあるようだという場合で差し引きプラスであるのかどうか分らないという時には、限定承認という方法もあります。これは、差し引きプラスの財産であれば財産と借金を引き継ぎ、マイナスの場合は財産も借金も引き継がないというものです。いくら故人に借金があったとしても相続した財産以上の借金は払いませんよ、といことです。つまり、自腹を切る必要はないのです。この限定承認という方法も、相続開始から3カ月以内に申し出ないといけません。相続放棄と違うのは、この申し出は相続人全員でしないといけません。ちなみに相続放棄は相続人がそれぞれ単独で行うことができます。
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遺族の生活を守る
  とかく経営者はリスクを背負っているものです。時にはそれが表面化してニッチもサッチもいかないという場合もあります。そんな最中に相続を迎えたら・・・。冒頭の会話もそういったケースでした。
  そんなときに、「相続放棄」と適切な「生命保険契約」を組み合わせると、遺族の生活を守るという大きな威力を発揮します。こういった保険加入は、本当に感謝されるものです。生命保険金が受取人固有の財産であるということを、一般の方に伝えていくことは大事なことです。
  今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことが出来れば、幸いです。
2005.10.17
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁