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税理士が見る生命保険販売のツボ
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お金が要らない保険の節税
節税には生命保険料という資金が必要
   保険、特に生命保険を使った節税対策(利益の繰り延べ対策)は色々とありますが、そのほとんどが当年度において生命保険料という「資金」が必要になります。
  しかも、いわゆる定期保険系については費用処理されることが企業受けしていることもあり、資産計上とされる終身保険については、昨今企業でのニーズはどちらかというと低いのではないかと思います(事業承継対策では必要になる場合が多いのですが…)。ちなみに、終身保険における生命保険料は、企業会計上「保険積立金」として資産計上され費用計上できません。
終身保険を払い済み保険に変更する
  しかし、すでに企業が契約者となり終身保険に加入している場合に、その終身保険を払い済み保険に変更すると、「手元資金が必要なく節税対策になる」ということをご存知でしょうか?
  つまり、新たな生命保険契約を結ぶのではなく、すでに加入済みの終身保険をその解約返戻金をもとに保険期間を変更せずに保険金額を低く設定し直すのです。そうすると、保障を継続するいわゆる「払い済み保険」に変更することになります。
  そうすると、節税対策になる場合があるのです。しかも資金の負担もなく、書類上だけの処理だけで…。
手元資金なしで節税対策が可能な場合
  それでは、終身保険を払い済み保険に変更して、手元資金なしで節税対策が実行できる場合とはどういった場合なのでしょうか。保険積立金1,000万円の場合を例に考えてみましょう。
ケース
  過去10年間、毎年100万円を生命保険料として支払っています。保険の種類は終身保険で、契約者は会社。この場合は、現在の企業のバランスシート(貸借対照表)を見ると、資産の部に「保険積立金」が1,000万円計上されているはずです。この時点での解約返戻金が700万円とすると、保険積立金1,000万円との差額である300万円が隠れた損失ということになります。
  では、この終身保険を「払い済み保険」に変更してみましょう。
  すると、隠れた損失(含み損といえる)の300万円を顕在化することができるのです。
  詳しくは、法人税基本通達9−3−7の2(払済保険へ変更した場合=別掲)に記されているのですが、そのまま資産に計上しておいてもいいし、積極的に節税対策に使うことも出来るようになっています。
  もちろん、終身保険を払い済みにするかどうかは、節税が可能であるからという理由だけでするべきではないのはいうまでもありませんが、生命保険を見直そうと考えているのであれば、単に「解約」ではなく保障が残る「払い済み」という方法も有効な選択肢の1つといえるのではないでしょうか。
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顧客の信頼を得る情報を提供する
  こういった情報は、ほとんどの保険営業マンが伝えることをしていません。伝えない理由はともかくとして、ほとんどの営業マンがしていないということは、逆に“差別化”につながるということです。こういったコンサルティングをしてあげると、経営者からの信頼が増すことは間違いないでしょう。
  もちろん、こういったケースでは、皆さんご存知の払い済みに変更するデメリット(特約部分の自動消滅など)もちゃんと事前に伝えておいてあげてください。

  今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことが出来れば、幸いです。
【参考】 法人税法基本通達 9−3−7の2(払済保険へ変更した場合)
 法人が既に加入している生命保険をいわゆる払済保険に変更した場合には、原則として、その変更時における解約返戻金相当額とその保険契約により資産に計上している保険料の額(以下9−3−7の2において「資産計上額」という。)との差額を、その変更した日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。ただし、既に加入している生命保険の保険料の全額(傷害特約等に係る保険料の額を除く。)が役員又は使用人に対する給与となる場合は、この限りでない。(平14年課法2−1「二十一」により追加)
(注) 1 養老保険、終身保険及び年金保険(定期保険特約が付加されていないものに限る。)から同種類の払済保険に変更した場合に、本文の取扱いを適用せずに、既往の資産計上額を保険事故の発生又は解約失効等により契約が終了するまで計上しているときは、これを認める。
2 本文の解約返戻金相当額については、その払済保険へ変更した時点において当該変更後の保険と同一内容の保険に加入して保険期間の全部の保険料を一時払いしたものとして、9−3−4から9−3−6までの例により処理するものとする。
3 払済保険が復旧された場合には、払済保険に変更した時点で益金の額又は損金の額に算入した金額を復旧した日の属する事業年度の損金の額又は益金の額に、また、払済保険に変更した後に損金の額に算入した金額は復旧した日の属する事業年度の益金の額に算入する。
2005.11.14
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁