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税理士が見る生命保険販売のツボ
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相続税なら良かったのに…
ある日、舞い込んだ相続税の申告依頼
  先日、知人の紹介で相続税の申告依頼がありました。
  電話で大まかなところを聞いていると、財産は自宅と少しの株式、そして生命保険とのこと。相続人は奥様と息子の2人で、財産分けについてもめることもなく、また財産の大まかな評価から「小規模宅地等の評価減」を適用すれば、相続税はかからない案件だろうと推測できました。ただしこの場合でも相続税の申告は必要となるので、その相談といった感じのようです。
  後日、奥様と息子が依頼していた書類を持参して事務所まで来てくれました。まずは概要をつかむために、自宅や株式、生命保険などの書類にざっと目を通しています。
  “事件”に気付いたのはその時です…。
  生命保険証券を眺めていて、一瞬目が止まりました。
ケース
税理士 「エッ!? 確か、亡くなられたご主人のお名前は波平(なみへい)さんですよね?」
依頼人の磯村フネ 「ええ、そうですよ」
税理士 「それでは、この保険契約者になっているカツオさんというのはどなたですか?」
フネの息子カツオ 「あ、それは私ですが…」
税理士 「そうなんですか。では、この保険の保険料は誰が払っていましたか?」
カツオ 「私です。今から10年ほど前に父が病に倒れたんです。すぐに回復したのですが、その後、私が父を被保険者として加入したのです。以降、私がずっと保険料を払ってきましたが、何か?」
税理士 「ということは、この保険は、保険契約者(=保険料負担者)が息子であるカツオさんで、被保険者が亡くなられた波平さん、そして保険金受取人が奥さんであるフネさんということになりますね。そうすると、この保険は、『相続税』の対象ではなくて『贈与税』の対象となります。つまり、保険料負担者であるカツオさんから、奥さんであるフネさんへの保険金贈与ということになりますね」
フネ 「相続税ではなくて贈与税の対象ということは、もしかして税金がかかってくるのですか!?」
税理士 「…。そうです。」
保険の契約形態を再確認しよう
  こういったケースに出くわすと、亡くなられる前に出会っていたらなぁとつくづく思います。このような“思わぬ贈与税”が発生することのないように、保険の契約形態と税務上の取り扱いについてまとめてみます。

保険の契約形態
契約者 被保険者 受取人 税務上の取り扱い
相続人 相続税(非課税規定あり)
相続人以外 相続税
所得税(一時所得)
贈与税
  節税の観点から相続税課税がいいのか、それとも所得税課税(一時所得)がいいのかは、ケースバイケースですが、ほとんどのケースで贈与税課税は不利となるでしょう。
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まとめ 保険契約と課税関係の説明をしてあげよう
  一般の方の多くは、保険契約の仕方によって課税関係がこれほど大きく異なるということを知らないものです。保険加入時に契約形態と課税関係についての説明があってほしいものです。

  今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことが出来れば、幸いです。

2005.11.14
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁