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保険に入って節税する?
ケース
クライアントの社長 「ねー先生、このままいくと今期1,000万円以上の利益が出そうなんや。なんとかしてくれへん?」
税理士 「へー、すごいじゃないですか。去年の銀行対策に比べたら、逆に良い悩みですよ」
社長 「ちょっと先生、他人事みたいに言わんといてやー。1,000万円の利益やったら、先生、税率4割言うてたから、400万円の税金やろ。そりゃ困るわ」
税理士 「社長の会社の場合、交際費が結構かかっていますから、正確に言うと、1,000万円の利益に約200万円の交際費加算があって、合計1,200万円が課税所得になり、それに対して4割なんで大体500万円ぐらいが納税額ということになりますね。あとそれから、消費税もありますよ。これは預かり金ですから滞納すると、税務署は厳しいですよ。大体これが300万円ぐらいですか」
社長 「ちょっと何それ。まさに税金地獄やな。せっかく努力してやっと稼いだ利益やのに、これやったら手元にいくらも残らへんやん。なー先生、この利益、保険とか使ったら消せるんちゃうん?わしも最近インターネットを使ってるから、結構知ってるんやで」
税理士 「まー、他に節税対策がないわけではないですが…。保険に入って節税をするというのは、厳密にいうと間違いなんですよ」
社長 「えっ、それどういうこと?」
税理士 「保険に入ってできることは、『利益の繰り延べ』でしかないんです」
社長 「利益の繰り延べ?どういうこと?それって、節税とは違うの?もっと詳しく教えてよ。」
「保険に入れば利益を消せる」は間違い!
  最近では、ブログやメルマガに代表されるようなITを使った便利な情報発信手段が、発達してきました。そのため、誰でもごく簡単に自分が伝えたい情報を発信できるようになりました。小さな個人テレビ局のようなイメージですね。ただしこれには弊害もあって、その発信される情報の質に大きなムラがあるということです。
  先ほどの税理士とクライアントとの会話の中でも、クライアントの社長が、インターネットで「保険に入れば利益を消せる」というような情報を見たと言っていますが、これは税理士の立場からは、間違いであるといえますね。
  それではこういった場合に、保険に入って一体何ができるのでしょうか?
保険でできるのは「利益の繰り延べ」
  保険でできるのは「利益の繰り延べ」です。正確に言うと、保険は「利益を消す」ことは原則できませんが、「利益を繰り延べる」ことはできます。
   例をあげると、ある会社で利益が多額に計上されていて、その会社の創業社長が5年後くらいに退職予定とします。そういった場合に、当初多額の経費が計上できる逓増定期保険などに加入します。そうすると加入当初は、利益と保険料が相殺されて税金がかかりません。一見税金を払うのを免れたように思いますが、そうではありません。その保険を解約などした場合に、そこで利益が計上されて課税されます。つまり、現在の利益を後ろにもっていっているだけです。
  しかしこの会社の場合は、その後退職金の支給が予定されていますから、保険の解約による収入と退職金という費用がうまく相殺されれば、その後も税金がかからないことになります。
  こういったスキームであると、「利益の繰り延べ」ができる「保険」という商品は、会社経営において非常に役立つものとなります。
  しかし、世の中に氾濫している「保険に入って節税する」という言葉は、誤解を生みやすい表現だと思います。現に、私のクライアントの社長さん(勉強熱心な方に特に多い)の中にも誤解されている方が数多くいます。これは、もしかしたら保険を売りたいがために必要な情報を営業マンが伝えていないからかもしれません。あるいは、そもそもの理解不足が原因かもしれません。
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まとめ 今こそ正しい知識を伝えるべき
  「保険嫌い」という社長さんは、結構います。それはもしかしたら、「保険に入れば節税になる」ということを頭ごなしに信じて、あとで営業マンが言っていたのと違うと感じたからかもしれません。また最近では、不祥事などの影響で保険業界にとっては逆風が強い時期でもあります。
  しかし私はそういう時だからこそ、保険に対する正しい知識を保険営業職員が率先して伝えるべきではないかと強く思います。保険に入って税金を消すことはできませんが、しかし、利益を繰り延べることはできます。それを理解して、加入してもらうことが大事であると思います。

  今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことができれば、幸いです。
2006.01.23
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁