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新会社法施行前か、後か?
新会社法の影響
  今年の5月に施行される新会社法ですが、意外なところにも影響しているようです。今回は、私自身がクライアント先の社長から相談を受けた事例をご紹介しましょう。
ケース
  社長は子会社として新会社を立ち上げようと考えていました。新「会社法」では資本金1円以上で株式会社がつくれ、しかも役員の人数や任期についても柔軟な対応がとれるということを以前から訪問時に伝えていましたので、社長もそれなりに新会社法の要点を理解していたようです。
  そこで社長から次のような相談を受けました。

「新会社法施行前にあえて『有限会社』をつくるメリットはないのか?」

  社長はもともと会社を複数社経営しており、すでに有限会社も株式会社も持っているのでこういった発想が出てきたのでしょう。
新会社法施行前に「有限会社」をつくるメリット
  新会社法施行前に「有限会社」をつくるメリットとしては、まず「役員改選が不要」という点があげられます。
  現行の株式会社であれば取締役2年・監査役4年の任期ですが、新会社法施行後は、定款の変更によって最長10年とすることができます。しかし現行の有限会社法では、取締役・監査役の任期は規定がないため、無期限となります。これは役員改選登記のための事務やコスト負担を削減できるという点でメリットがあるといえるでしょう。
  また、「決算公告が不要」であることも新会社法施行前に有限会社を作るメリットといえます。決算公告は新会社法において義務化されていますが、現在の有限会社法では必要ではないからです。
  さらに、いま有限会社をつくれば、設立後2年間は消費税免税という税の恩典が確実に受けられます。また、新会社法施行前に設立した有限会社は新会社法施行後、特例有限会社として存続することも、株式会社に組織変更することもできますので、その意味で選択権があるといえるでしょう。
新会社法施行前に「有限会社」をつくるデメリット
  逆にいま駆け込みで有限会社をつくるデメリットとしては、原則300万円の資本金が必要であるという「最低資本金規制」があげられます。
  このほか、「有限会社」というネーミングがもたらす信用力の低下イメージもデメリットといえるかもしれません。
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まとめ メリット、デメリットを総合勘案して決める
  表にまとめると以下のようになります。
新会社法施行前に、有限会社をつくるメリットとデメリット
<メリット>
1  役員改選が不要
新会社法においては取締役の任期を最長10年に伸長できるが、現在の有限会社法では取締役の任期は無期限となり、役員改選登記などが必要なくなる。

  決算公告が不要
決算公告は新会社法において義務化されているが、現在の有限会社法では必要ない。

  消費税の免税扱い
最低資本金規制がなくなる新会社法にあわせて消費税法の消費税免税制度の変更が予想されるが、確実なこととしては、現在資本金300万円で有限会社を設立すると、設立後2年間免税事業者となれる。

(注)新会社法施行前に設立した有限会社は、施行後、特例有限会社として存続することも、株式会社に組織変更することも可能。
<デメリット>
1  最低資本金規制
原則有限会社設立の場合、300万円の資本金が必要である。

  組織変更手続の手間と費用
会社法施行後、株式会社に組織変更する場合には、手続の手間と費用がかかる。

  「有限会社」のネーミング
有限会社○○というと、資本力や信用力が比較的低いと思われがちである。
  新会社法施行前に有限会社をつくる場合は、上記のようなメリットとデメリットを総合勘案して決めるとよいでしょう。


今日の話が少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。
2006.03.20
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁