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税理士から見た生命保険販売のツボ
> 自己株式買い取り財源は、保険がお勧め
会社法の注目点「自己株式」
ご存じの通り、会社法が今年5月に施行されました。これは商法第2編、有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律等の各規定を再編集したものです。
経営者にとって影響の大きい法律ですが、保険営業担当者の皆さんにはぜひ自己株式(金庫株)の取得について詳しく知っておいていただきたいと思います
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というのは、自己株式を活用する際の財源として、保険は最も有効な方法の一つだからです。ここではまず自己株式活用の利点を説明し、最後に保険の有効性について述べます
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今まで以上に利用しやすく
最初に、会社法において「自己株式が今まで以上に利用しやすくなった」ということを覚えておきましょう。
以前だと自己株式取得の意志決定は定時株主総会時に限定されていましたが、新たに臨時株主総会でもよいこととなりました。また従来は会社に株式を売却する譲渡人をあらかじめ指定しておかないといけなかったのですが、今回施行された会社法では、事前に譲渡人を指定せずに会社が自己株式を取得できる方法が創設されています。
結局、自己株式は「いつでも、何度でも、だれからでも」取得可能になったのです。
事業承継対策に効果発揮
では実際、どういったときに自己株式の取得が効果的であるかを考えます。
代表的なケースは事業承継における納税資金対策でしょう。
例えば相続税を支払えない事業承継相続人から会社が自己株式を買い取ることで、会社のお金を相続人に移転し、相続税の資金に充てることが可能となります。税制上の優遇措置もあります(後述)。
定款自治などを使って、分散した株式を会社が買い取ることもできます。これは事業承継における株式分散対策、すなわち経営権確保対策といえるでしょう。ちなみに種類株式(取得請求権付株式)を使っても同様の効果を得ることができます。
税制の優遇も受けられる
自己株式を相続時に活用すれば、税制上の優遇措置が受けられます。
まず、売却した株主の税金計算においては通常「みなし配当課税」として最高50%の税率がかかる可能性があるのに対して、相続で取得した(非上場)株式を相続税の申告期限後3年以内に発行会社に譲渡した場合には「譲渡所得課税」となり、税率が20%に下がる点です。
さらに、納税者にとって有利な「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」
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も利用できる場合があり、その場合は税負担がさらに下がります。
中小企業の事業承継対策に
今までみてきたように、自己株式の活用は特に中小企業の事業承継において大きな効果を発揮します。そして自己株式の買い取り財源としては、保険が有効な方法の一つになるでしょう。将来の買い取りに必要な資金を保険金で準備しておけば、円滑な事業承継が可能です。また保険設計の仕方によっては事前に費用処理をして税負担軽減効果が得られる場合もあります。
ただし、以下についてはあらかじめよく考えておいてください。
・自己株式買い取り後の株主構成はどうなるか
・自己株式買い取りのための財源(例えば保険など)は手当てできているか
・自己株式買い取りの際、財源規制(分配可能額の範囲内)に抵触しないか
・買い取り価格(法人税法上の時価への配慮)は税法上問題ないか
今日の話が少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。
※ 1 ここでいう自己株式の取得とは、自社が発行する株式を現株主から自社が買い取ることを指す。
※ 2
「今週のトピックス No.1252」
に関連記事あり。
※ 3 「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」とは、相続開始日の翌日から相続税申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までに、その相続等によって取得した財産を譲渡した場合に、一定の算式で計算した相続税額を譲渡所得課税計算上の取得費(経費)に加算してくれる制度。
2006.07.03
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など