> 税理士から見た生命保険販売のツボ > 決算3カ月前にするべきこと(後半)
税理士が見る生命保険販売のツボ
決算3カ月前にするべきこと(後半)
  前回に引き続いて今回は、「6-3-3で12個の決算対策」のうち「決算3カ月前にするべき6項目」の後半3項目についてお伝えします。
  まずは、4番目の項目である「良い節税対策」について解説をしていきます。
節税3カ条
  節税と一口にいっても、その形態はさまざまです。私は節税を大きく3つに分けて考えています。それは「良い節税・悪い節税・普通の節税」というものです。それでは「良い節税」とは具体的にどのようなものでしょうか?私なりに以下にまとめてみました。
第1条 資金不要であるべし
第2条 永久的な節税であるべし
第3条 高い節税効果があるべし
良い節税とは?
  すべてを満たすのはなかなか難しいかもしれませんが、例えば「資金不要」で「永久的な節税」対策としては、不良資産や不良債権の処理を税法の基準に従って、それぞれ「貸倒損失」や「固定資産除却損」に計上するようなことです。これは資金が要らず、さらに「永久的に」税金が減るので効果的です。200万円の不良資産があり、税法基準に従って「固定資産除却損」を全額計上できれば、200万円×40%(実効税率)=80万円の節税となります。
  ちまたに出回っている節税話の多くが「永久的に」税金が減るのではなくて、利益を来年以後にずらすことによる「税金支払い繰延対策」でしかありません。つまり、今年は利益を圧縮して税金を減らせても、来年以後その繰り延べられた利益を計上して納税しないといけなくなるようなものです。これでは完全に節税できたとはいえませんよね。
税金を払うぐらいだったら、〜?
  逆に「悪い節税」ですが、これは「最終的に会社や経営者にお金が残らない節税」のことです。よくあるのが、決算間際になって、「税金を払うぐらいだったら、〜しよう!」です。「〜」には、豪華な車の購入や無駄な交際費の支出、過大な設備投資などが入ります。これは一緒に働いている従業員などに悪い影響を与える意味でもよろしくありません。
  他人事のように思われるかもしれませんが、長年決算対策で仕事をさせてもらっていると、悪い節税を実行されているケースは、結構あるんですよ。
消費税納税予測
  経営者としては、決算3カ月前といわず毎月把握しておいてほしいのが、現在の消費税負担額です。常に現在の消費税負担額がいくらなのかというのを把握しようとすると、原則課税の場合は「税抜経理」が必要となります。税抜経理とは、売上や経費などがすべて税抜で表示されるということです。そして税抜経理を採用すると、毎月の試算表(貸借対照表)上に「仮受消費税」および「仮払消費税」という科目がでてきます。仮受消費税とは、売り上げたときに預った消費税のことです。仮払消費税とは、経費などを支出したときに支払った消費税のことです。そして仮受消費税から仮払消費税を引いた差額が、現在の消費税負担額です。ちなみに税抜経理というのは、パソコン会計(又は税理士事務所に記帳依頼)であると簡単に実施することができます。また、簡易課税の場合は「税込経理」でいいのですが、自社の売上内容がどの業種区分になるのかを事前に把握しておいて下さい。そして、いつでも売上高から現在の消費税負担額を計算できるようにしておいて下さい。
できれば、預金の移し変えも
  私がなぜ消費税負担額を常に経営者の方に把握しておいてほしいと思うかというと、会社の通帳を見たときに勘違いをしてしまう経営者の方が多いからです。例えば、通帳の残高が1,000万円あると、それを見た経営者の方がその1,000万円をすべて使ってもいいと考えてしまうといったケースです。そこでお勧めなのが、通常翌月半ばには出来上がる試算表上で「先月の消費税負担額」を計算し、即、その消費税負担額を別の消費税通帳に移し変えるということです。
  できれば、消費税以外にもその月の儲け(利益)に通常約40%の税率をかけた「法人税予想負担額」も移し変えておくといいですね。そしてこの税金通帳にあるお金は、事業経営では使ってはいけないとしておくといいですね。
事業承継対策
  決算3カ月前にぜひ検討していただきたい最後の項目としては、「事業承継対策=自社の株価計算」です。中小企業における事業承継で特に大きな問題となるのは、自社株価の高騰による相続税納税資金不足です。そのためには、現経営者が生前に、株式贈与などの対策をとっておくことが必要となります。
  株式贈与(現経営者→次期経営者候補)の方法としては、1つは「110万円の贈与税非課税枠」を使う方法です。そしてもう1つは、「相続時精算課税制度」を使う方法です。これは、原則65歳以上の親から20歳以上の子どもに対する贈与のうち2,500万円までであれば、一旦贈与税を非課税にしましょうという制度です(平成19年度税制改正により、一定の条件のもと3,000万円に非課税枠が拡大されました)。ただし、親が亡くなったときの相続税の計算では、その贈与がなかったものとして計算され、その株式の相続税法上の評価額は「贈与があったときの価額」となります。つまり、今後株価が高騰していくことがわかっている場合は、この「相続時精算課税制度」というのは有利になります。

以上長々となりましたが、決算3カ月前にやるべき6項目、ご理解いただけましたでしょうか。次回は、決算1カ月前のToDoについて解説していきます。
  今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことが出来れば、幸いです。
2007.5.14
  ページトップへ
税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁