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税理士が見る生命保険販売のツボ
中小企業には生命保険を使った代償分割が有効!
自宅と自社株の問題二つ
  中小企業の社長が亡くなって我々税理士がその亡くなった社長の相続財産を計算すると、自宅と自社株がその相続財産の大半といったケースがよくあります。
  ここで、中小企業の相続・事業承継を考えた場合に問題となるのが、相続人が払わないといけない相続税の納税資金不足です。つまり、換金性の乏しい自宅と自社株が相続財産の大半を占める場合、相続税を払うための現金が不足します。結果、社長がお亡くなりになってから約10ケ月後に到来する相続税の納税時に、相続人が納税資金不足で困るということになります。実際、自宅を売却するわけにはいかないでしょうし、また中小企業の自社株も換金性はほとんどないでしょうから。
  もう一つ、自宅と自社株が相続財産の大半を占める場合に問題となるのが、その財産分けにおいてです。例えば、相続人が妻と子ども2人の合計3人という場合、自宅と自社株が相続財産の大半であれば、それを3等分するのはなかなか難しいでしょう。
生命保険を使った代償分割
  そこで、そういった中小企業の社長さんに、生前から「生命保険を使った代償分割」というやり方をご提案すると喜ばれることがあります。
  国税庁のタックスアンサーによると、代償分割とは、「遺産の分割に当たって共同相続人等のうちの1人又は数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人等に対して債務を負担するもので現物分割が困難な場合に行われる方法」と説明しています。
  具体的に「生命保険を使った代償分割」の場合、まず、社長=契約者・被保険者、事業承継予定であり社長と同居している長男=保険金受取人の終身保険に加入します。そしてその後社長が亡くなったときの遺産分割で、長男に自宅及び自社株を相続させます。長男はさらに保険金も受け取ることになります。代わりに長男は、「代償分割」として、他の相続人に受け取った生命保険金の大半を渡すこととします。
  すると結果的に、生命保険金が相続税の納税資金対策及び遺産分割対策に有効に働いていることになります。
注意点
  ここで、「生命保険を使った代償分割」においては注意点があります。その注意点は、保険設計にあります。先ほどの例では、保険金受取人を事業承継予定者である長男にしました。それでは、この保険金受取人を他の相続人にするとどうなるのでしょうか。
  実は、他の相続人を保険金受取人とした場合、遺留分の問題が残ります。
  生命保険金というのはみなし相続財産に該当し、保険金受取人固有の財産とされています。つまり、先ほどの例で他の相続人が生命保険金を受け取った場合、他の相続人はさらに長男が相続する自宅と自社株に対して、遺留分を主張することができることになってしまいます。
  そこで、保険金受取人を長男にしておき、長男が代償分割として他の相続人に現金を渡すという形にしておく必要があるのです。更には、他の相続人に遺留分以上の現金を渡せるような保険金額の設定をしておくといいでしょう。こうすると、長男が他の相続人に代償分割として渡した現金が他の相続人にとっては正式な相続財産となるため、他の相続人は遺留分を主張できなくなるのです。

  今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことが出来れば、幸いです。
2007.8.13
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁