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税理士が見る生命保険販売のツボ
保険金と税金の怪しい関係
借金2,000万円の会社
  飲食店業を30年間されていたA社の社長甲氏が、突然心筋梗塞で他界されました。享年65歳でした。しかし甲氏は生前から自身の健康を危惧しており、自分に何かあったときでも遺族に迷惑がかからないようにと、会社の借金2,000万円と同額の2,000万円の定期保険に加入していました。加入形態としては、契約者=会社、被保険者=甲氏、死亡保険金受取人=会社でした。
  そしていざ甲氏が亡くなり、甲氏の妻がA社を引き継いだのですが、そこで税務上の問題がでてきました。というのは、借金返済のために加入していた保険金2,000万円に対して、税金が約800万円かかることが判明したからです。ということは、手取りが2,000万円−800万円=1,200万円になってしまい、借金を全額返せなくなったのです。更には、実際妻が事業を引き継いだときには何かと入用でお金がかかり、そして事業承継後約6ケ月ほど売上が6割程度に減少してしまったのです。結果的に、1,000万円ほどの運転資金が必要となり、甲氏の妻は資金繰りに奔走することにもなりました。結局は、今までの甲氏の堅実さが金融機関に良い印象を持たれていたこともあり、何とか事なきを得ましたが、甲氏の妻は保険金額の設定の重要性をかみしめることになりました。
保険設計の重要性
  今回のケースでは加入していた保険が定期保険であり、保険料支払い時に原則費用処理できる代わりに、保険金が会社に入ってきたときにはその全額が収入計上されることになります。結果、保険金の手取り額は、法人税の実効税率を約40%と仮定すると、その6割相当となってしまいます(本業での収支は考慮していません)。
  一般的には、保険加入時にその先の保険金受取時のことまでイメージするというのは、難しいようです。これはやはり周りの保険コンサルタントなどが助言してあげるべきことではないでしょうか。保険金受取時の税金をも考慮して、適切な保険金額の設定アドバイスをしてあげることは、後々大変喜ばれることになるでしょう。
  しかし冒頭の事例にもあるように、適切な保険金設定とは単に税金だけを考えればいいということではありません。適切な保険金設定に必要な主な項目を、以下に5つ列挙します。

・会社の借金返済資金
・会社の事業承継資金
・会社の運転資金
・遺族生活保障のための死亡退職金
・(必要な場合は)従業員への退職金

  特に、会社の借金返済資金については、税金を考慮して保険設計することが大事です。
  ただし、とはいえ保険というのはあくまでまさかの備えです。保険で全てをカバーしようとすると、大変な保険料になる場合もあります。あくまで、必要保険金額というのは一つの基準として、その会社の財務状況や経営者の年齢・健康状態などを考慮して、総合的に判断する必要があるでしょう。

  今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことが出来れば、幸いです。
2007.9.10
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁