平成19年に創設された「取引相場のない株式等に係る相続時精算課税制度の特例」とは、中小企業における事業承継支援の一環として導入されたものです。具体的には、図1にある要件を満たした場合に、先ほどの相続時精算課税制度における「65歳以上の親」という年齢制限が「60歳以上」に引き下げられ、非課税枠も500万円積み増しされ「2,500万円」から「3,000万円」になります(ただし500万円以上の特定自社株贈与に限ります)。中小企業における事業承継においては、従来の相続時精算課税制度の要件などを緩めてより使いやすいようにする、という改正内容となっています。
図1(適用要件)
1.贈与対象となる自社株の発行済株式総額が20億円未満であること
2.贈与する親が、特例選択時点でその会社の代表者であり、発行済株式総数(及び議決権数)の50%超を保有していること
3.贈与を受ける子どもが、贈与翌年3月15日から4年を経過する日までに、上記2の要件を満たしていること
4.平成19年1月1日から平成20年12月31日までに行われた贈与であること
5.その他一定の要件
ただし、この取引相場のない株式等に係る相続時精算課税制度の特例についても注意点があります。それは、「小規模宅地等の特例」や「特定事業用資産の特例」とは重複適用できないことになっている点です。先述の相続時精算課税制度においては、贈与された財産について「小規模宅地等の特例」の適用が受けられなくなる、ということでしたが、この相続時精算課税制度の特例の場合は、全面的に「小規模宅地等の特例」が受けられなくなります。これは、この相続時精算課税制度の特例を活用したということは、その会社については事業承継を完了させているはずだからこれ以上税務上の恩典を与える必要はない、ということが理由のようです。ですから要件に該当するからといってあわててこの相続時精算課税制度の特例を活用してしまうと、あとあとの相続税申告時に「小規模宅地等の特例」などが使えず多額の納税という可能性もありますのでご注意くださいね。
これらの事業承継税制における注意点というのは、案外、巷ではいわれていませんので、ぜひクライアント先の中小企業経営者やその後継者などに伝えてあげてください。喜ばれることと思います。
今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことが出来れば、幸いです。