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税理士が見る生命保険販売のツボ
第37回個人にとっての平成20年度税制改正
  前回に引き続き、自民党の「平成20年度税制改正大綱」についてお伝えします。前回は会社に影響する税制改正項目を中心にお届けしましたが、今回は「個人」に影響する税制改正項目にしぼって解説を加えたいと思います。ただし前回同様、この税制改正大綱は現段階では決定事項ではありませんので、そのことをご理解の上お読み下さい。
株式譲渡と配当金
  証券税制については、2つの大きな改正項目と1つの検討事項が税制改正大綱に記されています。まず改正項目の1つ目としては、「株式の譲渡損と配当所得との損益通算制度」です。現在では、株式の譲渡で損失が発生した場合に株式の譲渡益とは損益通算ができるのですが、同じ証券税制の中とはいえ「配当所得」とは損益通算ができません。それが、「上場株式等の譲渡損失と上場株式等の配当との間の損益通算を認める。申告による方法は、平成21年から開始し、特定口座を活用する方法は、システム開発などの準備が整った段階(早ければ平成22年1月)から開始する」とありますので、来年から「株式の譲渡損と配当とを損益通算させて配当に発生している税金の還付を受けることができる」ことになりそうです。また、損益通算には限度額を設けないとなっていますので、上限なしで損益通算が可能となりそうです。
  次に2つ目の証券税制における改正項目としては、「市場活性化・貯蓄から投資への推進を図るため、軽減税率は廃止した上で、市場特例措置・少額配当の軽減措置を講ずる」です。これは、株式譲渡所得、配当所得ともに軽減税率である現行の10%を平成20年末をもって廃止とした上で、平成21年以後は20%が原則的な税率になるということです。但し、株式譲渡所得は500万円以下、配当所得は100万円以下の部分のみ、平成22年末まで10%軽減減税率を適用できることとなっています。ちょっと複雑な税率に思えるかもしれませんが、株式譲渡所得500万円以下、配当所得100万円以下であれば、平成22年末まで現行の10%軽減税率が適用できるということです。
  そして税制改正大綱において、証券税制における将来の検討事項も記されています。「金融所得の課税の一体化については、金融商品間の課税方式の均衡化や上場株式等の譲渡所得と配当所得との間における損益通算の範囲の拡大を踏まえ、今後、税の中立性を勘案しつつ、その他の金融資産性所得も対象とした一体化について、引き続き検討を行う」とあります。近い将来においては、「金融所得課税の一元化」が行われることになるのかもしれません。
エンジェル税制
  次に、大綱では「エンジェル税制の抜本拡充」についても触れられています。エンジェル税制とは、おおまかには個人がベンチャー企業などに投資をした場合に、その個人の税金を投資金額などに応じて減免してあげましょうという制度です。ただ現行のエンジェル税制は適用となるベンチャー企業の要件などが厳しくほとんど利用されていないようです。そこで、経済産業省の資料によると、「これからの経済を支える産業や技術の本となり、地域の雇用拡大にもつながるベンチャー企業育成のため、エンジェル税制を抜本拡充し、ベンチャーへの投資額を所得控除できる制度を導入する」とあります。
  具体的には、個人が、設立3年未満の経済産業大臣の確認を受けたベンチャー企業に投資をした場合に、その投資額を寄附金控除として所得控除できるという内容です。ちなみに、所得控除の上限金額が「1,000万円と総所得金額の40%とのいずれか低い方」となっています。収入の高い方であれば、該当すると結構大きな節税となるかもしれません。さらには、この新エンジェル税制は寄附金控除の仕組みとして、恒久措置となるようです。
住宅取得資金に係る相続時精算課税制度の特例延長予定
  また上記以外の個人に影響する税制改正事項としては、平成19年12月31日で期限切れとなっている「住宅取得資金に係る相続時精算課税制度の特例」が2年間延長される予定です。これはおおまかには従来の2,500万円の非課税枠に住宅取得特別控除額1,000万円が上乗せされるというものです。
  最後に住宅関係の税制改正事項としては、「省エネ改修促進税制」と「200年住宅促進税制の創設」が予定されています。「省エネ改修促進税制」は、住宅ローンを借りて一定の省エネ改修工事を行った場合に、その住宅ローン残高の一定割合を5年間税額控除してくれる制度です(固定資産税の減額も有り)。「200年住宅促進税制」は、構造躯体や耐震性について数世代にわたり対応できる住宅について、登録免許税や不動産取得税、固定資産税を減免してくれる制度となっています。

  以上、個人に影響する税制改正項目をご紹介しました。会社だけではなく個人に関係する税制改正情報というのも、視点が異なり喜ばれるのではないでしょうか。
  今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことができれば、幸いです。
2008.03.10
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁