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税理士が見る生命保険販売のツボ
第39回銀行交渉を有利に導く5つの方法
  前回は、クライアント先である中小企業の銀行交渉を有利に導くために、銀行や銀行マンの立場および重視している事柄などを解説しました。「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」とは孫子の兵法の一節ですが、銀行を敵といってしまうのには語弊があるとしても、要は融資してくれる相手の立場を理解して交渉に臨むことが大事ということになります。
  さらに今回の記事では一歩踏み込んで、こういったことをすると銀行は喜んでくれるのですよ、ということを5項目にしぼって解説を加えたいと思います。
銀行交渉を有利に導く5つの方法
  あまり手間のかかることなどはなかなか中小企業では取り組みにくいでしょうから、簡単にできる項目ばかりを集めて、「銀行交渉を有利に導く5つの方法」をお伝えします。
1.貸付金や仮払金を減らす
2.決算書は2期比較・3期比較で提供する
3.決算書および経営計画書を自ら持参し銀行に説明に行く
4.決算書の科目内訳書を正確につくる
5.通帳作成時に決算書を提出する
貸付金や仮払金を減らす
  前回「銀行が融資する際のポイント」として、「資金使途」というのを説明しました。経営者にとっては軽く見がちな項目ですが、銀行マンにとってはとても大事なチェック項目となっています。そして、資金使途を重視する銀行マンが決算書を見たとき、資産の部に多額の「貸付金」や「仮払金」が計上されているとどう思うでしょうか。
  銀行の立場からすると、「貸付金」や「仮払金」があるということは、もしその会社に融資を実行してもそのお金が他の会社や個人に提供されるのではないかと危惧します。運転資金として貸してくれといわれても、実はそのお金は他の関連会社の融資返済などに回るのではないか、つまり迂回融資になるのではないかなどと銀行は考えます。つまり、銀行にとっては、貸借対照表に多額の「貸付金」や「仮払金」が存在する会社には融資を実行しにくいという事情があるのです。
  ということで、経営に問題の無い「貸付金」や「仮払金」であれば、経営者はそのことについて発生原因や解消予定などを詳しく説明すべきです。
  さらには、そもそも「貸付金」などは無いに越したことはありませんから、例えばそれが「社長貸付金」であれば「社長役員報酬」を増加させることによって減らしていくなど具体的な貸付金・仮払金解消スケジュールを組むことが大事になってきます。
決算書や科目内訳書を改善する
  現在の銀行融資というのは、格付融資が基本となっています。つまり、銀行は過去の決算書をコンピューターに入力してその会社をランク付けしています。そういった事情があるため、例えば、「決算書を2期比較や3期比較で銀行に提供」してあげることは喜ばれることが多いです。
  また通常、銀行は融資先の決算後に格付判定を毎年行います。ですから、決算が終わる頃になると、銀行から電話がかかってきて決算書を下さいと催促される経営者の方は多いと思います。そこで、銀行に喜ばれるための方法として、銀行から催促される前に、決算書や経営計画書を自ら持っていかれるといいのではないでしょうか。銀行の方に聞くと、そういったことをしてくれる企業はまだまだ少ないようですので目立ちますし、銀行格付でいうところの「定性評価」が上がる可能性もあります。
  また一方、銀行というのは融資をして回収が終わるまで、その最終利益は確定しません。そこで銀行では、融資した後のモニタリングという作業を慎重におこなっています。そのモニタリング作業で銀行が大事にしているのは、「決算科目内訳書」です。しかし中には、この科目内訳書を開くと、「売掛金 その他 1,000万円」と記入されていることがあります。これでは銀行はモニタリングできません。つまり、「売掛金 A社 東京都港区×× 3,250,000円 B社 東京都中央区×× 2,650,000円 … その他3件 256,000円」というような科目内訳書が望ましいといえます。
通帳作成時に決算書を提出する
  新しい銀行で通帳を作成しようとすれば、通常会社の印鑑と謄本ぐらいがあればできてしまうでしょう。しかし、通帳作成時にあえて「決算書」を持参してみてはいかがでしょうか。通帳作成時に決算書を参考までといって窓口に持参すると、たいていそれは銀行の法人営業担当者にまわされるようです。すると、その決算書をみた法人営業担当者から、自社宛に電話がかかってくるかもしれません。そのときすぐに融資の必要性がなかったとしても、銀行のほうから電話がかかってきて自社で面談できるというのは、後々会社にとってメリットが出てくることでしょう。これは、新規取引先を探している銀行にとってもありがたいことです。
  皆さんのクラインアント先である中小企業経営者の方々に、以上のような「銀行交渉を有利に導く方法」というのを伝えてあげると喜ばれるのではないでしょうか。どれも簡単に始められるものばかりですので、ぜひクライアント先に提案してあげてくださいね。
  今日の話が少しでも皆さんのお役に立つことができれば、幸いです。
2008.04.28
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁