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税理士が見る生命保険販売のツボ
「円高と株安の今、税金面のフォローが効果的」
それはパリバから始まった
  世界的な金融危機をめぐる動きが日々急展開しています。日本においては、円高株安の流れが実体経済にも影響してきているようです。もともとこの金融危機の発端は、2007年8月9日に「仏BNPパリバが傘下のファンド凍結を発表」したことから始まるといわれています。しかし、実際ファンドにたずさわっていた人間に聞くと、それ以前(2005年)から、「こんなものはバブルでしかなく、いつか大きく崩壊するだろう」とわかっていたことだそうです。
  日本ではサブプライムなどの実質的な被害はそれほど大きくないと報道されていますが、急激な円高・株安の影響は大きいものです。またこれは、皆さんのクライアントである中小企業経営者においても(特に投資をされている方には)大きな影響となっています。
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
  それでは、この株安に耐えられず大損失覚悟で経営者個人が株を売却したら、何か税金面で救済措置はあるのでしょうか?
  答えは、はい、あります。
  大きく2つの救済措置があるのですが、まず1つ目は、個人で上場株をお持ちで株の譲渡損が発生した場合に、今年の他の株式譲渡益と相殺でき、さらに、その損失が大きくて今年の譲渡益と相殺しても残額がある場合に、その損失を翌年以後3年間繰り越すことができます。つまり、翌年以後の株式譲渡益と損益通算ができるということです。これを、「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」といいます。
  ただしそのためには、以下の要件を満たす必要がありますのでご注意ください。
(1)上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税につき、上場株式等に係る譲渡損失の金額の計算に関する明細書および株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書の添付がある確定申告書を提出すること。
(2)その後において連続して確定申告書を提出すること。
(3)この繰越控除を受けようとする年分の所得税につき、上場株式等に係る譲渡損失の金額の計算に関する明細書および株式等に係る譲渡所得等の金額がある場合にはその計算明細書の添付のある確定申告書を提出すること。
昔から持っていた上場株を売った場合
  昔から持っている上場株の場合には、株の譲渡益(譲渡収入−取得費−売却手数料)を計算するときの取得費について、有利な取り扱いができる規定があります。これが2つ目の救済措置です。
  具体的には、平成13年9月30日以前から所有していた上場株式等を、平成15年1月1日から平成22年12月31日の間に譲渡した場合に、その取得費を「平成13年10月1日の終値の80%」とすることができます。平成20年中の上場株の売却であれば、この特例は使えますので、先ほどの「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」と合わせてご活用ください。
注)平成13年10月1日における上場株式等の株価一覧は以下で確認できます。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/denshi-sonota/kabushikijoto/kabuka/01.htm
外貨預金の利息収入は20%源泉分離課税
  円高・円安で影響を受けるのが、外貨預金をされている方です。外貨預金の場合、通常の預金と同様の「利息収入」以外に、円交換時の「為替差損・為替差益」というものがあります。
  まずは、外貨預金による利息収入の税金の取り扱いですが、これは、円預金と同様に、20%の源泉分離課税となっていますので、確定申告などは不要となります。
為替差損を節税に
  今が大きく円高状態にありますから、以前に外貨預金を始められた方は、為替において損をしていることが多いと思います。この為替差損の税金上の取り扱いは、雑所得扱いとなり、損をしているわけですから、確定申告不要となります。
  しかし、この為替差損は、他の雑所得と損益通算をして節税を図ることもできます。例えば、個人や会社への貸付金による金利収入がある、年金収入がある、といった場合です。これらの場合には、確定申告をあえてして、為替差損を節税に活用しましょう(年金収入に税金がかかっていない場合など節税にならないこともありますので、実行に際しては税理士などにご相談ください)。ちなみに、給与収入などとは損益通算できませんので、お間違えのないようにしてください。
  最後に、為替差益が出た場合ですが、年収2,000万円以下のサラリーマンで他に所得がなければ、「為替差益、年間20万円以下」の場合は確定申告不要となります。逆に、年間20万円超の為替差益があれば、確定申告が必要となりますので、忘れず行いましょう。
  注)予約レートを設定している場合の為替差益は20%源泉分離課税となり確定申告不要です。
  未曾有の金融危機ですが、投資をされている経営者の方などには、税制上の特典を忘れないようにアドバイスしてあげましょう。
  今日の話が皆さんのお役に立つことができれば幸いです。
2008.12.08
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁