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税理士が見る生命保険販売のツボ
「純資産が多額の会社、キャシュフローが少ない会社には…」
  その会社の決算書が手に入ると、保険提案のきっかけをつかむことができるケースがあります。
  前回まで3回にわたって損益計算書や貸借対照表からわかる、保険提案につなげるきっかけとなるであろうポイントを解説してきました。今回はその締めくくりとして、貸借対照表およびキャシュフローを中心に解説します。
純資産が多額の優良会社
  貸借対照表では、資産や負債以外に右下に表示されている「純資産の部」もご確認ください。可能であれば、併せて税務申告書の2枚目にある株主一覧も確認できると、現状がわかりなお良いでしょう。
  この純資産の部が○億円などと多額になっていて、さらに現経営者が大半株式を所有している会社では、事業承継時の相続税納税資金問題を抱えていることが多いのです。そこで、株式の移転が未了で純資産の部が多額な優良会社には、「事業承継対策としての保険提案」が有効でしょう。
  とっかかりとしては、税理士などとタイアップして、「株価計算」をしてあげるのがいいでしょう。すると、まだまだ若いと考えていた経営者も、今のうちから対策をしておかないといけないという危機感が出てくることがあります。このときに例えば、事業承継資金として活用するために、役員退職金準備のための保険提案などを行うと喜ばれることがあります。
  また、遺産分割でもめそうな会社があれば、生命保険が受取人固有の財産で遺留分の対象外とされることを利用して、「生命保険を使った代償分割」の提案も有効でしょう。代償分割とは、「遺産の分割に当たって共同相続人等のうちの1人又は数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人等に対して債務を負担するもので現物分割が困難な場合に行われる方法」(国税庁タックスアンサー)ですが、 具体的には、社長=契約者・被保険者、事業承継予定者=保険金受取人の終身保険に加入するなどが考えられます。
キャッシュフロー計算書
  このシリーズの最後は、第三の財務諸表といわれる「キャッシュフロー計算書」をみて、キャッシュフローが良くない会社に対する保険提案の切り口です。キャッシュフローが良くないつまり手許現金が少ない会社では、保険に入りたくても入れないと考えているケースが多いのです。
  そこで、現状のキャッシュフローを改善する提案をしてみてはいかがでしょうか。そして、結果的にそこから保険料支払い原資を捻出するのです。
  キャッシュフロー改善案としては、以下の5カ条が参考になるでしょう。会社の運転資金の計算式は、おおまかには「売掛金+在庫−買掛金」となり、この部分が会社では通常、資金不足となります。そこで、売上サイトをできるだけ短くして、仕入サイトを問題のない程度にできるだけ長く、さらには在庫をなるべく少なく持つようにできると、キャッシュフローは大幅に改善されます。例えば、売上のうち一部を現金回収にしたり、末締めの翌末入金のものを新規取引先から翌20日入金に変えてもらったり、仕入サイトを30日から40日に変更してもらったりなどが考えられます。
  また、事務所保証金や取引開始時などに求められる営業保証金などの固定資産は、そのままお金が寝てしまうので、なるべく少ないほうが、キャッシュフロー上は好ましいです。
  また、ビジネスモデル自体の修正として、「前受けでもらえるビジネス」を取り入れるというのもあります。これも、ダイレクトにキャッシュフロー改善となりますので、金額によっては効果が大きいものとなるでしょう。
  今回の内容が、生命保険営業員の皆様の中小企業経営者へのアドバイスの一助となれば幸いです。
2010.02.08
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税理士 今村 仁 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
京都府京都市出身
立命館大学経営学部企業会計コース卒
会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。
その後2003年今村仁税理士事務所を開業、
2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。
[保有資格]
  税理士・宅地建物取引主任者・CFP(R)・1級FP技能士など
税理士 今村 仁