>  今週のトピックス >  No.2626
長期金利が急騰、今後の景気はどうなる?
  5月13日の東京金融市場で長期金利が急上昇し、一時は0.8%と高水準となった。これは、円安・株高が進む一方で債券が売られたことが原因である。
  日本銀行(以下日銀)は、金利を引き下げ、お金を借りやすくして経済を活性化しようと、4月4日に歴史的な金融政策を打ち出した。「量的・質的金融緩和」で、消費者物価上昇率2%を早期に実現するというものである。しかし、日銀の思惑とは逆に金利は上昇しており、景気回復を遅らせる恐れがある。
  4月4日以降の市場の動きを見てみよう。
<長期金利推移と背景>
(皆Pウィム作成)
● 国債の流動性リスクが高まり、利回りが急上昇
  日銀が大量の国債を買い入れる新たな金融政策を導入した(詳細はNo.2610参照)ことを受け、債券の買い姿勢が強まり、その結果、新発10年物国債の流通利回りが一時、過去最低の0.31%となった。
  その後、市場の需給バランスが一時的に崩れ、長期金利は乱高下し、4月末には0.6%前後まで上昇した。この背景には、国債の流動性リスクが高くなっていることがある。
  日銀が大量に国債を購入する(買いオペ)と、民間金融機関では買いオペに対応する国債の売りが大きくなるため、市場を通しての売買を手控えるようになる。そうすると市場での取引額が少なくなり、売り注文や買い注文を出しても成立しなくなる。その結果、流動性リスクが高くなるのである。
  流動性リスクが高くなると、早めに売却して現金化しておこうとの思惑が働くため、債券価格が急落し、利回りが上昇する現象が起きたようだ。
● 住宅ローン金利は今後も上昇が続くか
  国債の利回り上昇の影響を受けて、5月には銀行の住宅ローン金利(固定10年型)が引き上げられた。大手銀行では前月比+0.05%の1.4%程度となった。
  国債の利回りは、5月13日には一時、前週末の終値より0.11%高い0.8%と、約3か月ぶりの水準まで上昇した。債券の利回りが1日に0.1%幅で上下するのは異例のことである。金利上昇の遠因となったのが、日経平均株価の上昇である。国債より値上がりが見込める株式市場へ資金を回すため、国債を売却する動きが強まったことが原因のようだ。
  現状が続けば、国債の利回りのさらなる上昇が見込まれる。そうなれば住宅ローン金利も上昇するだろう。その結果、住宅購入に対する不安感が強まって住宅市場が冷え込み、景気も後退してしまうことが懸念される。日銀の早急な対策に期待したい。
  
伊田 賢一 (いだ・けんいち)
株式会社FPウィム 代表取締役、株式会社WINKS 代表取締役
CFP®認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社3社に勤務の後、2002年に独立系FPとして活動開始。独立系FP会社役員を経て、2007年に相談業務を中心としたFP会社として株式会社FPウィムを設立。2010年には多角的なFPサービスの提供を目的とした株式会社WINKSを設立。相談者の心の内の心配ごとをいち早く見つけ、個々人の夢や目標に応じたマネープランニングを提案し、実行援助、管理、見直しに至るまで包括的なサービスを提供している。個人や企業の相談は月平均30件、講演、セミナーも年間60件を超えるなど、幅広いファイナンシャル・プランニング業務を行っている。さいたま朝日に「家計の知っ得」、ホケモンに「保険の基礎知識」などを連載中。おもな著書に「うかる!FP技能士2級」「うかる!FP技能士3級」「うかる!証券外務員2種」などがある。
NPO法人日本FP協会 埼玉支部副支部長、 マネーカフェさいたま代表、埼玉県金融広報委員会アドバイザー。
株式会社FPウィム http://fpwim.com/
  
  
2013.05.23
前のページにもどる
ページトップへ