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消費者庁、消費増税時のセール表示等の指針案公表
● 消費税分を値引きする等の広告の禁止
  3月22日に閣議決定された「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案」(消費税転嫁円滑化法案)については本稿4月1日付(No.2600)の記事でもお伝えしたが、これを受けて、消費者庁はこのほど、平成26年4月の消費税率8%に引上げ時のセール表示等に関する指針案を公表した。「あたかも消費者が消費税を負担していない(負担が軽減される)かのような誤認を消費者に与えないようにするとともに、納入業者に対する買いたたきや、競合する小売事業者の消費税の転嫁を阻害することにつながらないようにするため、事業者が消費税分を値引きする等の宣伝や広告を行うことを禁止するもの」との考えを示した。
  禁止表示の具体例として、「消費税は転嫁しません」、「消費税率上昇分値引きします」、「消費税相当分、次回の購入に利用できるポイントを付与します」などを挙げた。
  ただし、「消費税」といった文言を含む表現であっても、消費税分を値引きする等の宣伝や広告でなければ、禁止されない。例えば、「毎月20日は全品5%割引セール(なお、4月1日から消費税率が8%になります)」との表示自体では直ちに禁止されるものではない。
● 「3%値下げ」や「3%還元」は容認
  「消費税」の文言を含まない表現は、宣伝や広告の表示全体から消費税を意味することが客観的に明らかな場合でなければ、禁止される表示には該当せず、原則容認する。
  しかし、「消費税」の文言を含まない表現でも、例えば、「増税分3%値下げ」や「税率引上げ対策、8%還元セール」など、「増税」や「税」といった文言を使って実質的に消費増税分を値引きするなどの趣旨の宣伝や広告を行うことは、禁止する表示に該当する。
  一方、宣伝や広告の表示全体からみて、消費税を意味することが客観的に明らかな場合でなければ、いずれも、消費税分を値引きする等の宣伝や広告には該当しない。具体例として、(1)消費税との関連がはっきりしない「春の生活応援セール」、「新生活応援セール」、(2)たまたま消費税率の引上げ幅と一致するだけの「3%値下げ」、「3%還元」、(3)たまたま消費税率と一致するだけの「10%値下げ」、「8%還元セール」、を挙げた。
● 買いたたきや購入強制などの禁止事項を示す
  なお、公正取引委員会も、消費税転嫁対策特別措置法のガイドライン(案)を公表し、中小などの納入事業者を保護するため、買いたたきや購入強制・役務の利用強制などの禁止事項を具体的に示した。
  ただし、「合理的な理由」がある場合は禁止の対象とはならない。例えば、買いたたきとならないケースでは、原材料価格等が客観的に下落している場合や、大量発注などによるコスト削減効果が生じている場合などを例示している。
  大手小売事業者が消費増税分の価格転嫁を拒めば、所管官庁の指導や公取委の勧告の対象となることも明記している。
  これら消費者庁・公取委の指針案は、ともに8月23日までパブリックコメントに付された後、正式決定する。
参考
消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方(案)
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/130725premiums_2.pdf
消費税転嫁対策特別措置法のガイドライン(案)
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/jul/gl_pabukome.files/20130725-3.pdf
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2013.08.19
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