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日本版ISA(NISA)の活用法とシミュレーション
  2014年1月から、日本版ISA(少額投資非課税制度、以降NISA(ニーサ))が始まる。この制度は、証券会社や銀行などの金融機関で、少額投資非課税口座(NISA口座)を開設して上場株式や株式投資信託等を購入すると、本来20%課税される配当金や売買益等が、非課税となる制度である(詳しくは今週のトピックスNo.2613参照)。購入できる金額は年間100万円までで、非課税期間は5年間だ。
  つまり、2014年にNISAで株式を購入した場合、5年後の2018年末には、
@非課税枠を利用して売却
A再度NISAを利用する
B一般口座、特定口座へ移管する
のいずれかを選ばなければならない。
  今回は、5年後に株価が値上がりした場合や値下がりした場合についてシミュレーションし、対処法を解説したい。
1)5年後に株価が値上がりした場合
  2014年にNISAでA銘柄の株式を100円で100万円分購入し、5年後に株価が120円となって時価120万円となった場合、
@ 非課税枠を利用して売却
120万円−100万円=20万円の利益が非課税となる。
A 再度NISAを利用
売却せずに再度NISAを利用する場合には、100万円しか引き継げない。20万円は売却するか一般口座もしくは特定口座に移管することになる。
B 売却せずに特定口座、一般口座に移管
一般口座、特定口座に移管したときの株価120円がみなし取得価格になる。よって、その後、140円で売却したときは140円−120円=20円が課税対象となる。つまり、120円以下で売却した場合には課税されない。
2)5年後に株価が値下がりした場合
  上記と同様にA銘柄を100円で100万円分購入し、5年後に株価60円、時価60万円となった場合、
@ 非課税枠を利用して売却
売却価格60万円−100万円=▲40万円
NISAで売却すると40万円の損失となるが、NISAでは損失がなかったものとみなされるため、一般口座や特定口座で保有する他の上場株式の配当金や売買益との損益通算はできない。
A 再度NISAを利用
NISAを再度利用すると非課税期間が5年間延長されることなり、その年に40万円(100万円−60万円)を追加して投資ができる。
B 売却せずに特定口座、一般口座に移管
一般口座、特定口座に移管すると60円がみなし取得価格になる。その後、60円以上で売却した場合には、当初の購入価格(100円)以下で売却しても課税されるので注意が必要である。例えば80円で売却した場合80円−60円=20円が課税の対象となる。
3)NISAをどのように利用するか
  NISAを利用する場合に、まず、金融機関をどこにするかが重要である。口座は原則1人1口座しか開設できない上に、開設後4年間は他の金融機関に移管できないからである。
  金融機関を選ぶ際には自分が投資したい金融商品の品ぞろえがあるかが重要なポイントとなる。口座を開設した金融機関に利用したい金融商品がなければ、せっかくの非課税制度を利用できなくなる。
  金融商品を選ぶ場合、5年という投資期間を考慮すると、中長期的に値上がりが見込める投資信託なども有効である。一回で100万円を投資するのではなく、毎月83,000円(≒100万円÷12カ月)ずつ投資する方法も有効であろう。
  NISAを利用する場合には、このように投資する金融商品や投資手法などを事前に確認し、自分に合った投資手法を確立したいものである。
  
伊田 賢一 (いだ・けんいち)
株式会社FPウィム 代表取締役、株式会社WINKS 代表取締役
CFP®認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社3社に勤務の後、2002年に独立系FPとして活動開始。独立系FP会社役員を経て、2007年に相談業務を中心としたFP会社として株式会社FPウィムを設立。2010年には多角的なFPサービスの提供を目的とした株式会社WINKSを設立。相談者の心の内の心配ごとをいち早く見つけ、個々人の夢や目標に応じたマネープランニングを提案し、実行援助、管理、見直しに至るまで包括的なサービスを提供している。個人や企業の相談は月平均30件、講演、セミナーも年間60件を超えるなど、幅広いファイナンシャル・プランニング業務を行っている。さいたま朝日に「家計の知っ得」、ホケモンに「保険の基礎知識」などを連載中。おもな著書に「うかる!FP技能士2級」「うかる!FP技能士3級」「うかる!証券外務員2種」などがある。
NPO法人日本FP協会 埼玉支部副支部長、 マネーカフェさいたま代表、埼玉県金融広報委員会アドバイザー。
株式会社FPウィム http://fpwim.com/
  
  
2013.08.22
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