> 今週のトピックス > No.2794 |
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高齢者支援の「新しい地域づくり」の行方 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() ● 要支援1・2へのサービス、地域格差が広がる懸念も
現在、国会では、平成27年度の施行をめざした介護保険制度の改正案が審議されている。今週のトピックス(No.2742ほか)でもすでに取り上げた通り、大きなポイントの一つが「要支援1・2と判定された人のサービスを新しい総合事業へと移行させる」点だ。訪問看護や通所リハビリなどについては、従来と同じ予防給付でまかなわれるが、訪問介護・通所介護の2つについては、新事業の枠内での提供となる。
この新事業については、従来の訪問介護・通所介護以外にも、多様な主体による生活支援サービスを重層的に提供することを軸としている。「多様な主体」とは、民間企業のほか、NPO法人、ボランティア団体、協同組合、社会福祉法人など幅広く想定されている。これらの主体が、家事援助、配食+見守り、声かけ・安否確認、交流サロンなど、地域の高齢者ニーズに対応した様々なサービスを提供していくというものだ。これまでの介護保険でまかなえない範囲のサービスも入ってくる。 だが、これによって高齢者支援のサービスが手厚くなるのかというと疑問も多い。まず、介護保険サービスへの個別の給付と異なり、事業費の枠が定められている。国としては、事業費が上限を超える場合の対応について「個別に判断するしくみとする」と述べている。だが、単価は市町村が独自に設定でき、その設定によっては事業者の経営状況を圧迫する懸念もある。それまでの訪問介護・通所介護の事業者が撤退する可能性も囁かれる。 そうなると、上記に示したとおり、多様な主体(ボランティアなど)に頼らざるをえない部分も大きい。問題となるのは、こうした提供主体が地域にどれだけあるかという点だ。市町村としては、地域ニーズに合わせた様々な社会資源の開発に取り組んでいかないと、サービスの地域格差が大きな問題となる。高齢化率が高い地域では、活動主体と支援を受ける側のバランスが崩れかねない。国は法案内で新事業への移行期間に猶予を設けたが、市町村としては相当に頭を絞らざるをえない。 ![]() ● 専門コーディネーターの力は、地域事情を変えられるか
こうした点を踏まえ、国は「地域づくりのあり方」そのものにメスを入れようとしている。たとえば、ボランティアの発掘・養成・組織化などの地域資源開発を市町村にうながし、そこに資源開発・調整を担う専門のコーディネーターを配置するといった具合だ。ちなみに、高齢者自身が事業を担うビジョンも示しており、高齢者同士が支え合うことで互助意識や介護予防の進ちょくも目指している。
では、前述した専門のコーディネーターとはどんな存在か。国はこれを「生活支援サービスコーディネーター(仮称)」と名づけており、このコーディネーターの配置等について、平成26年度予算案で5億円を計上している。また、厚労省の老人保健事業の一環として、市民団体やNPO法人が養成研修をスタートさせた。研修プログラムをみると、地域ニーズの推定方法や自治体への支援依頼の方法、提案書の作成なども含まれており、具体的な実務に関する内容を見ることもできる。 問題は、どんなにコーディネーターが優秀でも、長年培われた風習・風土、限界集落など過酷な地域事情をどこまで変える力があるかという点だ。新事業が「机上の空論」にならないためには、さらに強力なテコ入れが必要になるかもしれない。そこに新たな予算投入が必要となれば、社会保障費の膨張を抑えるという命題にも暗雲が漂うことになる。 ![]()
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2014.03.27 |
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